第15章 死穢八齋會
「……二人とも」
オールマイトが、穏やかな声で口を開いた。
「彼女が公安の人間であることは、今後も秘密にしてほしい。君たちが知ったことで、彼女の任務に影響が出る可能性もあるからね」
「分かっています」
緑谷は真剣に頷いた。
「誰にも話しません」
「俺もだ。そんなヘマするかよ」
爆豪も即答する。
「ありがとう」
オールマイトは、二人に向かって深く頷いた。
「そして、おもち。君も、何かあれば私に相談してほしい。叔父として、君を心配する気持ちは変わらないのだから」
「……うん。ありがとう、叔父さん」
彼女は微笑んだ。
その笑顔を見て、オールマイトもようやく表情を和らげる。
昼休みの終わりは、もう近かった。
それでも、三人はすぐには席を立たなかった。
秘密を共有するということは、ただ事実を知ることではない。
相手がどんな過去を背負い、どんな選択をしてきたのかを知り、それでもなお、これから一緒にいたいと思えるかどうか。
今日、緑谷と爆豪は、おもちの知らなかった一面をいくつも知った。
そして彼女もまた、二人が自分の秘密を知ったうえで、そばにいようとしてくれることを知った。
制服姿の彼女は、相変わらず美しかった。
けれど今、二人の目に映る彼女の美しさは、昨日までとは少し違っていた。
強さも、脆さも、優しさも。
そのすべてを抱えながら、自分の意志で歩いていく女性。
緑谷は、もっと彼女のことを知りたいと思った。
爆豪は、いつか彼女が自分の前で何も隠さずに笑ってくれる日を、心のどこかで願っていた。
そして二人とも、まだ知らない。
彼女の秘密を知ったことで、自分たちの心まで、少しずつ彼女に引き寄せられていることを。