第15章 死穢八齋會
飾らない、柔らかな声。
爆豪は、思わず視線を逸らした。
「……別に」
耳が、ほんの少しだけ赤くなる。
それを見ていた緑谷は、胸の奥がちくりと痛むのを感じた。
爆豪が彼女を大切に思っていることは、もう隠しようがなかった。
そして、自分もまた、彼女のことをもっと知りたいと思っている。
ただ尊敬しているだけではない。
彼女が笑えば嬉しいし、苦しそうにしていれば助けたい。自分に心を開いてくれるなら、その気持ちに応えたい。
その感情が何なのか、緑谷はまだ、はっきりと言葉にできなかった。
けれど、少なくとも一つだけ分かっていた。
もう、彼女を遠い存在として眺めているだけではいられない。
「……私、二人に話せてよかった」
おもちは、緑谷と爆豪を交互に見た。
「これまで、自分のことをどこまで話していいのか、ずっと迷っていたから。全部を話すことはできないけれど……少しずつでも、分かってもらえたら嬉しいわ」
「うん!」
緑谷は、すぐに頷いた。
「僕も、もっとおもちさんのことを知りたいです。でも、無理に話してほしいわけじゃなくて……話せることから、少しずつでいいので」
「……おう」
爆豪も短く答えた。
「勝手に全部理解した気になるつもりはねぇ。だから、てめぇも勝手に俺らのことを遠ざけんな」
その言葉に、おもちは一瞬だけ目を見開いた。
それから、心の奥にあった何かが、また少しだけほどけていくのを感じた。
彼らは、自分の秘密を知った。
それでも、離れていかなかった。
むしろ、知らなかった自分を知ろうとしてくれている。
その事実が、胸に沁みた。
隣では、オールマイトが三人の様子を静かに見守っていた。
姪が自分の選んだ道を歩んできたことを、誇らしく思う。
けれど同時に、彼女がこれからも一人で危険を背負おうとするのなら、叔父として見過ごすことはできない。
だからこそ、今、彼女の隣に立とうとしている二人の少年の存在が、少しだけ心強かった。