第15章 死穢八齋會
「叔父さんが、人を助けるヒーローとして活動している姿を、私はずっと見てきたから」
青い瞳が、再びオールマイトを捉える。
「だから、私も自分にできることをやりたいと思ったの。叔父さんのように、たくさんの人を救えるわけではないけれど。表舞台に立たなくても、誰かを守る方法はあるでしょう?」
その言葉は、静かだった。
けれど、確かな意志があった。
誰かに強制されたわけではない。
誰かに認められるためでもない。
彼女は自分で選び、自分の足で、この道を歩いてきたのだ。
「……だから、後悔はしていないわ」
そう言って微笑む彼女の姿は、制服姿の女子生徒とは思えないほど、凛としていた。
華奢な肩。
整った顔立ち。
長い髪が、わずかな動きに合わせて揺れる。
その佇まいには、二十一歳の女性としての成熟した美しさと、数々の修羅場をくぐり抜けてきた者だけが持つ、揺るぎない風格があった。
それなのに、彼女は雄英の制服を着ている。
自分たちと同じ教室で授業を受け、食堂でカレーを食べ、何でもないことで笑っている。
そのアンバランスさが、かえって彼女という存在を際立たせていた。
緑谷は、思わず見惚れていた。
彼女のことを、もっと知りたいと思った。
任務のために隠していた顔だけではない。
昨日、屋上で涙を流した彼女。
夕食の席で、辛いカレーを頑張って食べようとしていた彼女。
そして今、自分の生き方をまっすぐに語る彼女。
そのすべてが、同じ一人の人間なのだ。
自分はまだ、そのほんの一部しか知らない。
「……すごいな」
気づけば、そんな言葉が口からこぼれていた。
「え?」
おもちが振り向く。
緑谷は、少しだけ頬を赤くしながら、それでも真剣に彼女を見つめた。
「おもちさんは……本当に、強い人なんですね」
彼女は一瞬、目を丸くした。
それから、困ったように笑った。
「そんなことないわ。私だって、迷うことはあるもの」
「それでも、です」
緑谷は譲らなかった。
「自分で決めたことを、ちゃんと自分の言葉で話せるのは、すごいと思います」
その言葉に、彼女は少しだけ目を細めた。