第15章 死穢八齋會
「妹さん……!」
「そう。彼女の両親は、彼女がまだ幼い頃に交通事故で亡くなっている」
オールマイトの声から、いつもの明るさが少しずつ消えていく。
「私の妹夫婦が亡くなったとき、私はすでにナンバーワンヒーローとして活動していた。平和の象徴として、人々を守るために、毎日が目まぐるしく過ぎていく生活だった」
彼は、隣に座る姪を見つめた。
「彼女を気にかけていなかったわけではない。連絡はこまめに取っていたし、可能な限り様子を確認していた。だが、直接会える機会は、どうしても限られていたんだ」
おもちは、静かに頷いた。
「叔父さんは忙しかったもの。世界中の人を守るために、いつも頑張っていたから」
「……それでも」
オールマイトは拳を握った。
「私は、彼女が公安に入ったことを知っていた。本人が選んだ道であることも理解していたし、彼女の意志を尊重したかった。私の知る範囲では、彼女は自分の生活をきちんと築いていたんだ」
そこで一度、言葉を切る。
「だが、まさか、これほど危険な任務に身を投じていたとは……」
彼の視線が落ちた。
「もし、こんなことになると分かっていたら。公安に任せきりにせず、もっと私のそばに置いておけばよかった。せめて、もっと近くで守ってやれたのではないかと……そう思わずにはいられない」
その言葉には、後悔が滲んでいた。
ナンバーワンヒーローとして、数えきれない人々を救ってきた男。
けれど、たった一人の姪が、危険な場所で戦っていたことに、気づけなかった。
その事実が、彼の胸を締めつけていた。
「叔父さん」
おもちは、そっと彼の手に自分の手を重ねた。
「そんな顔をしないで」
オールマイトが顔を上げる。
彼女は、いつもの柔らかな笑みを浮かべていた。
けれど、その笑顔には、年齢にそぐわないほどの強さがあった。
「これは、私が選んだ道だから」
「……おもち」
「もちろん、危険なことがなかったとは言わないわ。怖いと思ったこともあるし、苦しいこともあった。でも、誰かがやらなければならないことがあるのなら、私にもできることがあると思ったの」
彼女は、窓の向こうに視線を向けた。