第15章 死穢八齋會
あのとき、自分は彼女を敵だと思っていた。
守ろうとしたエリのために、彼女を蹴った。
それなのに、彼女は自分を責めることもなく、むしろ自分なら助けてくれると信じてくれていた。
「ごめんなさい……僕、何も知らなくて……」
「謝らないで。あの状況で、あなたがエリちゃんを助けるために行動したことは間違っていないわ」
彼女は優しく微笑んだ。
「私は、あなたに助けてほしかったのだから」
その言葉に、緑谷は何も返せなくなった。
隣では、爆豪が黙って彼女の話を聞いていた。
彼女がどれだけの危険を引き受けてきたのか。
どれだけの嘘を重ね、どれだけのものを一人で抱え込んできたのか。
昨日までは、知らなかった。
いや、知ろうともしなかったのかもしれない。
自分たちと同じ教室にいる彼女を、ただ同じ生徒だと思っていた。
けれど、目の前の女性は、とうの昔に自分たちの知らない世界で戦っていたのだ。
「……それで」
爆豪が口を開いた。
「てめぇの中にいる龍ってのは、何なんだ」
その質問に、オールマイトがわずかに表情を引き締めた。
おもちも、すぐには答えなかった。
やがて、彼女は静かに息を吸った。
「私の個性には、もう一つ、特殊な側面があるの」
彼女の青い瞳が、二人を見つめる。
「私の内側には、龍が棲んでいる」
「龍……?」
緑谷が呟いた。
「ええ。単なる個性の具現化というだけでは、説明しきれない存在よ。私の力と深く結びついていて、必要なときには外に姿を現すこともある。私自身が意図しなくても、傷ついた人を癒やすことだってあるわ」
「治癒もできんのか……」
爆豪が眉を寄せる。
「それに、時間を止めたり、巨大な龍の姿を取ったりもできる。けれど、何でも自由に使えるわけではないし、力を使うことで私自身に負担がかかることもある」
「そんなことまで……」
緑谷は言葉を失った。
個性の強さだけでも、十分に規格外だ。
それなのに、彼女の能力には、まだ自分たちの知らない側面がある。
「だからこそ、公安は私の個性の本質を公にはしていないの。知られれば、利用しようとする人間も出てくる。実際に、私の力を狙う敵もいたから」
彼女は淡々と説明した。