第15章 死穢八齋會
爆豪も組んでいた腕をわずかに動かす。
「敵側と……?」
「ええ。詳しい調査のためには、外部から調べるだけでは限界がある。だから、生徒として学校生活を送りながら、内部の状況を観察することになったの」
「じゃあ、最初から俺たちを調べるために入ってきたってことかよ」
爆豪の声には、わずかな棘があった。
おもちは、その言葉を否定しなかった。
「そうね。最初は、みんなのことも調査対象として見ていたわ」
「……っ」
緑谷が息を呑む。
「でも、今は違う」
彼女は二人の目を順番に見た。
「みんなと過ごした時間まで、任務だったことにしたくない。雄英での生活は、私にとっても大切なものになっているから」
爆豪は何も言わなかった。
ただ、彼女の言葉を確かめるように、その横顔をじっと見ていた。
緑谷は、胸の奥が少しだけ温かくなるのを感じた。
昨日、彼女が屋上で流した涙。そして、最後に見せてくれた本当の笑顔。
あれが任務のための演技ではなかったのだと、改めて思えた。
「それから、私の年齢についても話しておくね」
おもちは背筋を伸ばした。
「私は現在、二十一歳。公安には十四歳のときから身を置いているわ」
「…………は?」
爆豪の口から、思わず間の抜けた声が漏れた。
「じゅ、十四歳!?」
緑谷も椅子から身を乗り出す。
「待ってください!十四歳って、中学生ですよね!?そこから公安に……!?」
「ええ」
彼女はあっさりと頷いた。
「もちろん、最初から今と同じ任務を任されていたわけではないけれど。訓練を受け、知識を身につけ、少しずつ現場に出るようになったの」
「七年間……」
緑谷は呆然と呟いた。
目の前にいる彼女は、自分たちと同じ制服を着て、同じ教室で授業を受けている。
けれど、その内側には、自分たちが想像すらできない時間が積み重なっていた。
十四歳から公安の世界に身を置き、現在は二十一歳。自分たちがヒーローになるための勉強をしている間に、彼女は実際の現場で任務を遂行してきたのだ。
「だから、仮免試験のあとに本免許を受け取ったのも、特別なことではないの。これまでの実務経験と、公安での評価を踏まえたものだから」
「特別じゃねぇわけねぇだろ……」
爆豪が低く呟いた。