第15章 死穢八齋會
さっき、屋上で泣いた顔を見たばかりだ。
秘密を知られても、拒絶されなかったことに安堵して、ようやく本当の笑顔を見せてくれた。
あの顔を見て、これ以上好きになることなんかないと思った。
なのに。
どうして、こんな何でもねぇ日常の一場面で、また心臓を鷲掴みにされなければならない。
しかも。
「…………」
爆豪の視線が、彼女の頬に触れている轟の手へと移った。
――何、勝手に触ってやがる。
轟は心配しているだけだ。
それくらい、爆豪にも分かっている。
分かっているからこそ、余計に腹が立った。
あいつはいつもそうだ。
無自覚に距離が近い。
本人にその気があるのかないのかも分からないまま、平然と彼女の隣に立ち、手を差し伸べる。
そして、おもちもまた、轟の気遣いを疑うことなく受け入れている。
――気安いんだよ、てめぇは。
気づけば、爆豪は席を立っていた。
「おい」
低い声に、轟が視線を向ける。
次の瞬間、爆豪は彼女の頬に触れていた轟の手首を掴んだ。
「勝手に触ってんじゃねぇ」
「……爆豪?」
轟は一瞬、目を見開いた。
爆豪の手に力がこもる。
「大体てめぇは、気安いんだよ」
「……心配してただけだが」
「そんくらい分かってんだよ!!」
「じゃあ、何が問題なんだ?」
「てめぇ……!」
一触即発。
二人の間に、明らかにただならぬ空気が流れ始めた。
「ちょ、ちょっと待って!?」
上鳴が慌てて立ち上がる。
「何で急に喧嘩腰なんだよ爆豪!轟も、そこで普通に聞き返すなって!」
「え?俺、何かしたか?」
「そういうところだよ!!」
切島も頭を抱えた。
女子たちはというと。
「え、何これ……?」
「ちょっと、爆豪くん、もしかして……?」
「待って待って、これって……!」
声を潜めているつもりなのだろうが、興奮が隠しきれていない。
その中心で、当の本人だけが状況を理解できずにいた。