第15章 死穢八齋會
オールマイトと別れたあと、緑谷、爆豪、そしておもちの三人は、連れ立って寮へと戻った。
玄関をくぐると、ちょうどロビーにいた飯田が、いつもの快活な声で出迎えてくれる。
「おお、三人とも!遅かったじゃないか。今日はカレーライスだぞ!」
その声に重なるように、食欲をそそる香りがふわりと鼻をくすぐった。ロビーには、煮込まれたカレーのスパイスと野菜の甘い匂いが漂っている。
「わあ、美味しそうな匂い!」
おもちは思わず目を輝かせた。
「すぐに着替えてくるね」
そう言い残すと、軽やかな足取りで階段を上がっていく。
部屋に戻った彼女は、制服を脱ぎ、柔らかな部屋着に着替えた。髪を軽く整えると、空腹に背中を押されるように、急いで階下へと戻っていく。
ロビーには、いつもと変わらない光景が広がっていた。
切島と上鳴が何やら騒ぎ、峰田が女子たちに絡んでは芦戸に叱られ、飯田は配膳の順番について真面目に説明している。八百万は食器を整え、轟は静かに自分の席を探していた。
いつも通りのクラスメイトたち。
ついさっきまで、自分の秘密を知った二人と一緒にいたことが、まるで嘘のようだった。
緑谷と爆豪。
彼らは、自分が公安の人間であることも、雄英に潜入していたことも、死穢八斎會でステラとして活動していたことも知ってしまった。
それでも、二人は言ってくれた。
黙っていればいい。これからも一緒にいたい、と。
胸の奥に残っていた緊張が、少しずつほどけていく。
……今は、二人の言葉を信じてみよう。
そう思えたことが、何よりも嬉しかった。
そして。
張り詰めていたものが緩んだせいか、彼女はすっかり気が抜けていた。
その結果、自分でも気づかないうちに、いつもの天然ぶりを発揮してしまうことになる。
「カレーはこっちだぞ!甘口と辛口があるから、間違えないようにしてくれ!」
飯田の説明を聞き流しながら、おもちは鍋の前に立った。
二つの鍋。
甘口と辛口。
彼女は辛い食べ物が得意ではない。むしろ、できることなら避けたいくらいだった。
しかし、今の彼女はそんなことを考える余裕もなく、無意識のまま辛口の鍋からカレーをよそってしまった。