第15章 死穢八齋會
自分のことは自分で決める。
自分の責任は自分で負う。
誰かに心配をかけない。
誰かに迷惑をかけない。
そうやって、自分を律してきた。
だから、どれだけ苦しくても、笑うことができた。
どれだけ怖くても、平気な顔をすることができた。
どれだけ寂しくても、誰にも頼らずにいられた。
そうしていれば、いつか本当に、一人で大丈夫になれると思っていた。
けれど。
「……どうして、そんなに優しいの……?」
声が震えた。
自分でも、驚くほど弱々しい声だった。
緑谷が、はっと息を呑む。
爆豪の目が、見開かれた。
彼女は慌てて笑おうとした。
いつものように。
何でもないことのように。
「……ごめんなさい。こんなつもりじゃ……」
けれど、うまく笑えなかった。
視界が滲む。
頬を伝った雫が、制服の襟元へ落ちた。
「……っ」
彼女は、目を見開いた。
泣いている。
自分が。
今、ここで。
人前で。
それも、クラスメイトの前で。
涙を流している。
「……あれ」
震える指先で頬に触れる。
濡れていた。
どうして。
泣くつもりなんてなかった。
泣いたところで、何かが変わるわけでもない。
そう思っていたのに。
次から次へと、涙が溢れてくる。
「……ごめん、なさい……」
彼女は顔を伏せた。
「私……どうして……」
言葉にならなかった。
何を謝ればいいのかも、分からなかった。
秘密を隠していたこと。
彼らを欺いたこと。
自分のことを話せなかったこと。
それとも、こんなふうに泣いてしまったことだろうか。
「……っ、なんで……」
震える肩を、彼女は必死に押さえようとした。
泣くな。
泣いてはいけない。
そう思えば思うほど、涙は止まらなかった。