第15章 死穢八齋會
「もちろん、全部を話してほしいなんて言いません。話せないことがあるのも分かります。でも……」
彼は、まっすぐに彼女を見つめた。
「それでも、僕はあなたを助けたいです」
屋上に、静寂が落ちた。
「……助けたい?」
彼女の唇が、かすかに動いた。
「はい」
緑谷は迷わず頷いた。
「あなたは、今まで僕たちを助けてくれた。あの時、壊理ちゃんを僕たちのところへ向かわせてくれたのも、あなたなんですよね」
彼女は、わずかに視線を落とした。
「……ええ」
「だったら、今度は僕たちが、あなたの力になりたいです」
その言葉を聞いて、爆豪は小さく舌打ちした。
「……テメェだけ、いいこと言ってんじゃねぇぞ、デク」
「えっ!?かっちゃん、別にそういうつもりじゃ……!」
「うるせぇ」
爆豪は彼女を見た。
逃がすつもりはなかった。
任務から降りるな、という意味ではない。
彼女の人生を、自分たちの都合で決めるつもりもない。
ただ、彼女が勝手に自分たちとの関係まで終わらせようとしていることが、気に食わなかった。
「勘違いすんなよ」
爆豪は、ぶっきらぼうに言った。
「俺らに秘密を隠してたことが、全部許せるとか、そういう話じゃねぇ」
彼女は、静かに彼を見つめた。
「……うん」
「テメェが何を考えてんのか、まだ分かんねぇことだらけだ。公安がどうとか、任務がどうとか、俺らの知らねぇことが山ほどある」
爆豪は一度、言葉を切った。
「だが、だからって、テメェがここからいなくなる理由にはなんねぇだろ」
その声には、隠しきれない苛立ちがあった。
けれど、それは彼女を責めるためのものではなかった。
彼女が自分たちの前からいなくなる。
その可能性を考えただけで、胸の奥がひどくざわついた。
そんなことは、絶対に嫌だった。
「……テメェは、俺らと一緒に過ごしてきた時間が大事だったんだろ」
「……ええ」
「だったら、勝手に捨てようとすんな」
彼女は、目を見開いた。
「俺らがどうするかは、俺らが決める」
爆豪は、彼女から目を逸らさなかった。
「テメェが公安だろうが、何だろうが。今まで一緒にいたことまで、なかったことにする気はねぇ」