第15章 死穢八齋會
爆豪は拳を握りしめた。
腹が立っていた。
自分に何も話さなかったことも。
危険な場所にいたことも。
何より、そんな場所にいた女が、昨夜は何事もなかったように寮で笑っていたことが。
全部、気に食わなかった。
「……なんで言わなかった」
ぽつりと落ちた声は、先ほどよりも低かった。
彼女の表情が、わずかに変わる。
「何を?」
「だから、何もかもだよ!」
爆豪は、苛立ちを隠そうともせずに言った。
「公安だとか、本免だとか、死穢八齋會だとか!テメェが何を背負ってんのか、俺らは何も知らなかった!それなのに、テメェはいつもどおり笑って、何もねぇみてぇな顔して……!」
言葉が途切れる。
本当は、もっと言いたいことがあった。
なぜ、自分にだけでも話してくれなかったのか。
なぜ、何も知らない自分たちの前で、あんなにも自然に笑えたのか。
なぜ、ひとりで全部片づけようとするのか。
だが、それを口にすれば、自分の感情まで露わになってしまいそうだった。
彼女は、静かに爆豪を見つめていた。
「……ごめんなさい」
その言葉に、爆豪の眉がぴくりと動く。
「私は、あなたたちに話すつもりはなかったの」
「……あ?」
「知ってしまったら、今までどおりにはいられなくなるでしょう?」
彼女は、ゆっくりと言葉を続けた。
「私が公安の人間だと知れば、あなたたちは私を見る目が変わるかもしれない。何を話していいのか、どこまで信じていいのか、分からなくなるかもしれない」
彼女の視線が、二人の間を行き来した。