第15章 死穢八齋會
少し前。
職員室へ向かおうとしていた緑谷は、廊下の向こうから歩いてくるオールマイトの姿を見つけた。
「……あれ?」
声をかけようとして、足が止まる。
いつものオールマイトとは、雰囲気が違っていた。
笑顔がない。
誰かを探しているように視線を動かし、迷いなく屋上へ続く階段へ向かっている。
その背中には、普段の彼からは想像できないほどの緊張感があった。
「オールマイト……?」
緑谷は思わず呟いた。
「何ぼさっとしてやがる」
後ろから声がした。
振り返ると、爆豪が立っていた。
「かっちゃん。今、オールマイトが……」
「ああ。見りゃ分かる」
爆豪は、オールマイトが消えていった階段を睨んでいた。
「何かあったんだろ」
「でも、どうして屋上に……」
緑谷は考え込んだ。
その時、ひとつの可能性が頭をよぎった。
今日、職員室への呼び出しがあった。
呼ばれていたのは、確か……。
「……おもちさん?」
思わず名前が口から漏れた。
爆豪の眉がぴくりと動いた。
「……あいつか」
「さっき、呼び出し放送があったのに、職員室に来なかったんだよね。もしかして、オールマイトが直接話をしに行ったのかな……」
「何で、あいつが呼び出されてんだ」
爆豪の声が低くなる。
緑谷は答えられなかった。
ただ、胸の奥に、嫌な予感が広がっていく。
死穢八齋會の事件。
あの時、現場にいた金髪の女性。
公安が捜していたステラという用心棒。
そして、昨日、自分が立てた推測。
もし、あの女性が本当に公安の人間だったのなら。
もし、おもちさんが何かを知っているのなら。
「……行ってみよう」
緑谷は小さく言った。
爆豪は一瞬だけ彼を見たが、何も言わなかった。
ただ、先に階段へ向かった。
二人は、足音を立てないように屋上へ続く階段を上がった。
そして、扉の向こうから聞こえてきた会話に、思わず足を止めたのだった。