第3章 USJ襲撃事件編
芦戸がじっと彼女を見る。
「もう一個、聞きたいことがある」
「何?」
「なんでそんなに強くて、そんなに綺麗なの?」
「……え?」
彼女が固まった。
「それ!」
葉隠が乗っかる。
「私も気になってた!」
八百万まで真剣な顔になる。
「お顔も美しいうえに肌も髪も綺麗ですわよね」
彼女は困ったように笑う。
「普通だよ」
「普通じゃない!」
「絶対普通じゃない!」
「何食べたらそんな綺麗になるの?」
質問が一気に飛んでくる。
彼女は笑いながら、一つずつ受け流していく。
「美容法は?」
「特にないかな」
「嘘だー!」
「本当にないって」
「じゃあ、個性が関係しているとか?」
八百万がふと尋ねた。
その言葉に、彼女の笑顔が、ほんの一瞬だけ止まった。
「……」
個性に関係があるなんて、考えたことなかった。
こうして実際に周囲から言われ続けると、もしかしたら、本当に個性と何か関係があるのかもしれない。
「……どうかな」
彼女は曖昧に笑った。
「個性と容姿が関係あるなんて、聞いたことないけど」
「でも、個性って身体にも影響するものもありますわ」
八百万が考え込む。
耳郎も頷く。
「耳とか、蛙とか、尻尾とか……」
「私なんか透明だし!」
葉隠が割り込む。
「……なるほど」
彼女は葉隠を見る。
「確かにそう考えると、個性が身体に何か影響していてもおかしくないのかもね」
「でしょ!?」
彼女は笑った。
けれど、その瞳の奥では、自分自身でもまだ理解しきれていない個性の秘密について、静かに考えていた。
「ねえねえ!」
芦戸がまた彼女の肩を揺らす。
「じゃあさ!」
「ん?」
「もっと本気出したら、どれくらい強いの?」
「……」
彼女は一瞬だけ目を細めた。
そして、いたずらっぽく笑う。
「秘密」
「また秘密!」
「でも――」
彼女は苺を一つ口に運ぶ。
「皆が思ってるよりは、たぶん強いよ」
「えええ!?」
「気になる!」
「もっと教えて!」
女子たちの歓声が上がる。
彼女はそんな皆を見ながら、くすくすと笑った。
その笑顔はいつもの彼女そのもの。けれど、誰にも見せていない力がある。
誰にも話せない過去がある。
そして、その力の奥には、彼女自身ですらまだ知らない秘密が眠っていた。