第15章 死穢八齋會
成功させた。
確かに、彼女は任務を遂行した。
必要な情報を持ち帰り、壊理を救出へと導き、正体を明かすことなく現場から離脱した。
結果だけを見れば、彼女は優秀な公安の人間だった。
だが、オールマイトが聞きたいのは、そんなことではなかった。
「……君は、怖くなかったのか」
その言葉に、彼女はわずかに眉を動かした。
「何が?」
「敵の中にいることも。正体が露見すれば命を落とすかもしれないことも。誰にも助けを求められない状況に置かれることも……」
オールマイトは、苦しげに息を吐いた。
「怖くなかったのかと、聞いているんだ」
長い沈黙が落ちた。
彼女は、手元の煙草を見つめていた。
やがて、唇がわずかに動く。
「……怖いかどうかなんて、考えている暇はなかったわ」
それは、答えになっているようで、なっていなかった。
「やるべきことがあった。だから、やった。それだけよ」
「君はいつもそうだ……」
オールマイトの声が、かすれた。
「いつも、自分のことを後回しにする」
「そんなつもりはないわ」
「なら、なぜ私に話してくれなかった!」
彼女は答えなかった。
「君が危険な任務に就くことを、私は理解しているつもりだった。君の仕事を否定するつもりもない。君が自分の意思で公安にいることも、知っている」
オールマイトは、一歩だけ彼女に近づいた。
「だが、君がどんな任務を背負っているのか、私は何も知らなかった。君がどこで、何をして、どんな思いをしていたのか……私は、何も知らなかったんだ」
彼女は顔を上げた。
オールマイトの目には、怒りだけではなく、深い悲しみが浮かんでいた。
「君の叔父でありながら、私は……」
「オールマイト」
彼女が、静かに呼んだ。
「あなたは、私の叔父よ」
「……ああ」
「だからこそ、話せなかったの」
その言葉に、オールマイトの表情が止まった。
彼女は、煙草を口元へ運ぼうとして、やめた。
「あなたは、私が危険な目に遭うことを望まない。私が傷つくことも、誰かを傷つけることも、できることなら避けてほしいと思っているでしょう?」
「当然だ!」
「でしょうね」
彼女は苦笑した。