第15章 死穢八齋會
訓練では、誰よりもあいつの動きが目に入る。
他の奴が褒められても、どうでもいい。
だが、あいつが自分の予想を超える動きをすれば、腹が立つほど意識してしまう。
もっと強くなりたいと思う。
あいつに負けたくない。
それだけなら、今までにも何度もあった。
けれど、最近はそれだけでは済まなくなっていた。
他の男と楽しそうに話していると、妙に気に食わない。
特に、轟と並んでいる時。
あの無表情な半分野郎が、彼女の隣で自然に手を貸したり、彼女の話に耳を傾けたりしているのを見ると、無性に苛立つ。
別に、あいつが誰と話そうが勝手だ。
誰と過ごそうが、爆豪が口を出すことじゃない。
分かっている。
分かっているのに。
気づけば、二人の間に割って入っている。
あの時だって、そうだった。
轟が彼女の隣でシナモンを量っていた時、気づけば自分も手伝うと言っていた。
別に、チャイなんぞ作りたかったわけじゃない。
ただ、あのまま二人で楽しそうにしているのが気に食わなかった。
それだけだ。
……それだけのはずだった。
「…………」
爆豪の視線が、彼女の横顔に戻る。
今、あいつは笑っている。
八百万が何かを話し、耳郎が呆れたように肩をすくめる。それを聞いた彼女が、目を細めて楽しそうに笑った。
いつもと変わらない光景。
少し前までなら、何も考えずに眺めていられたはずだった。
だが、死穢八齋會の事件以降。
どうにも、違和感が拭えない。
元気そうにはしている。
笑ってもいる。
クラスメイトと話しているし、授業にも普通に出ている。
体調が悪そうな様子もない。
少なくとも、表面上は。
それなのに。
「…………」
爆豪の目が細くなる。
以前なら、くだらないことで笑った。
面倒くさそうに文句を言った。
眠そうに頬杖をついて、授業の合間にぼんやりしていることもあった。
自分のことになると適当で、周囲が心配するほど気を抜いている時もあった。
そういうところが、確かにあった。