第15章 死穢八齋會
彼女が公安の人間である以上、危険な任務に就く可能性があることは理解していた。
彼女自身も、それを承知のうえで生きている。
だが、彼女はまだ雄英高校にいる。
生徒たちと机を並べ、授業を受け、寮で暮らしている。
表向きの立場とはいえ、彼女には彼女の学校生活があるはずだった。
それなのに、公安は彼女を死穢八齋會へ送り込んだ。
そして、彼女の能力が明らかになったことで、さらに深い任務を与えようとしている。
「……塚内君。彼女の個性についても、何か分かったのかい?」
塚内の表情がわずかに変わった。
「今回の任務で、彼女の個性に関する情報が得られた」
「個性……?」
「公安内部では、これまで彼女の能力を限定的に把握していた。だが、今回の件で、彼女が本来持っている力の一端が明らかになったらしい」
オールマイトは息を呑んだ。
彼女の個性については、知っているつもりだった。
しかし、それは彼女自身が語った範囲でしかない。
「彼女の個性は、公安が考えていた以上に特殊なものだったようだ。詳しい内容については、私からもすべてを説明することはできない。ただ……」
塚内は、慎重に言葉を続けた。
「その能力が判明したことで、公安は彼女をより重要な任務に投入できると考えている可能性がある」
その瞬間、オールマイトの中で何かが切れた。
「……いい加減にしろ」
低い声だった。
塚内が目を上げる。
オールマイトは普段、誰かを責めるような言い方を好まない。たとえ相手に非があったとしても、まずは話を聞き、理解しようとする。
だが、今は違った。
「彼女の能力が優れているから、危険な任務を任せる。任務をこなしたから、さらに危険な任務を任せる。そうやって、彼女がどこまで耐えられるのか試しているとでもいうのか?」
「オールマイト……」
「彼女は、君たちの道具ではない!」
声が部屋に響いた。
長年、平和の象徴として立ち続けてきた男の怒りだった。
「彼女がどれほど優秀なのか、私も知っている。彼女が自分の意思で公安に協力していることも、承知している。だが、それとこれとは話が違う!」
オールマイトは拳を握りしめた。