第15章 死穢八齋會
「実務経験が五年以上あること。そして、試験を通じて必要な能力が確認されたこと。それらを踏まえ、公安が本免許の交付を認めたんだ」
オールマイトは資料を握りしめた。
彼女が優秀であることは知っていた。
並外れた観察眼。冷静な判断力。危険な状況でも動じない精神力。
それらが、普通の生徒とは異なる経験によって培われたものであることも。
しかし、だからといって。
「……本免許を与えたのは、彼女を守るためではないのか?」
オールマイトは、絞り出すように尋ねた。
塚内はすぐには答えなかった。
その沈黙が、何よりも雄弁だった。
「本免許を取得したことで、彼女が任務に参加できる範囲は広がった。公安はそれを踏まえて、今回の死穢八齋會への内偵を任せたんだ」
「任せた……?」
「彼女自身の能力を考慮した結果だろう。死穢八齋會の内部に入り込み、組織の実態を調査する。そのために、彼女は用心棒という立場を利用して潜入していた」
オールマイトは、ゆっくりと資料を机に置いた。
頭の中で、さまざまな情報が結びついていく。
死穢八齋會への突入作戦。
緑谷少年たちが遭遇した金髪の女性。
壊理という少女。
そして、現場から姿を消した用心棒、ステラ。
「……まさか」
オールマイトの脳裏に、ひとつの可能性が浮かんだ。
「彼女が、ステラだったのか」
塚内は、静かに頷いた。
「その通りだ」
オールマイトは言葉を失った。
彼女は、ヴィランの組織に潜入していた。
自分の正体を隠し、敵の懐に入り込み、いつ命を落としてもおかしくない場所で任務を遂行していたのだ。
それも、彼には何一つ知らせずに。
オールマイトは目を閉じた。
胸の奥に、冷たいものが沈んでいく。
何も知らされていなかったことへの困惑。
そして、それ以上に強く湧き上がる感情があった。
憤りだった。