第3章 USJ襲撃事件編
通話を切り、画面が暗くなった。
彼女は小さく息を吐いた。
そして――
いつもの柔らかな表情に戻る。
「……さて」
鞄を肩に掛け直し、玄関へ向かう。
靴箱からローファーを取り出そうとした、その時。
「ねえ!」
「さとうさーん!」
「待って!」
振り返る。
そこには、芦戸、麗日、蛙吹、耳郎、葉隠、八百万がいた。
「……どうしたの?」
芦戸がニヤッと笑う。
「今からさ!あたしたちパフェ食べに行くんだけど!」
「……パフェ?」
「そう!」
麗日が嬉しそうに頷く。
「駅前に新しいお店ができたんだって!」
耳郎がスマホの画面を見せる。
そこには、生クリームと苺が山盛りになった巨大なパフェ。
「うわ……」
彼女の目が輝く。
「すごい」
「でしょ!?」
葉隠が興奮気味に言う。
「絶対おいしいよ!」
「#NAME11#さんもご一緒いたしません?」
「私も?」
「もちろん!」
八百万も微笑む。
「最近、皆でゆっくり過ごす機会もありませんでしたもの」
「ケロ。たまには放課後に寄り道するのもいいと思うわ」
蛙吹が頷く。
彼女は少しだけ黙った。
さっきまで、公安の話をしていたが、目の前に、笑顔の女子たちがいる。
「……」
少しだけ口元が緩む。
「じゃあ、一緒に行こうかな」
「やったー!」
芦戸がおもちの腕に抱きつく。
「今日は女子会だからね!」
彼女がくすっと笑う。
「なんだか、普通の高校生みたい」
その言葉に、麗日が笑った。
「何言ってるの! 私たち高校生じゃん!」
「……そ、うね」
一瞬だけ自分が年齢を偽って潜入捜査をしていることを忘れていた。
そして、くすりと彼女は笑う。
さっきまでの公安の顔は、どこにもなかった。
「それじゃあ、皆で女子会行くぞー!」
「いっぱい食べよう!」
「写真も撮ろうね!」
「私は抹茶!」
「私は苺!」
「私はチョコ!」
六人の声が廊下に響く。
彼女はその輪の中に混ざって歩き出した。
――任務のために作られた、偽りの高校生活。
そう思っていたはずなのに今は、この時間が、少しだけ本物に思えた。