第15章 死穢八齋會
「壊理ちゃん、あの女性にはすごく懐いていたんだ。僕たちには、あんなに怯えていたのに……。あの人のそばでは、少なくとも僕が見た時は、少し違って見えた」
「敵の一員だったんじゃないのか?」
爆豪が眉をひそめる。
「最初は、そう思っていたよ。でも……」
緑谷は首を横に振った。
「結局、あの人は残党の中から見つからなかったんだ」
ざわり、と空気が揺れた。
「見つからなかったって、逃げたってこと?」
芦戸が尋ねる。
「うん。公安からも、ステラという用心棒を取り逃がした、という話があったんだ。現場にいたはずなのに、どこにもいなかった」
緑谷は一つひとつ、事実を確かめるように言葉を重ねていく。
「壊理ちゃんが懐いていた金髪の女性。残党の中にいなかったステラ。そして、公安が言っていた有能な陰の立役者……」
彼はそこで、ゆっくりと顔を上げた。
「もしかしたら、その陰の立役者って……ステラという女性だったんじゃないかな」
その推測に、誰もすぐには答えなかった。
「えっ、じゃあ、あの女の人は味方だったってこと?」
麗日が驚いたように目を見開く。
「まだ、確かなことは何も分からないよ。でも、もしそうなら……」
緑谷は眉間にしわを寄せ、考え込む。
「僕たちが見ていた姿と、実際の立場が違っていた可能性がある。壊理ちゃんを守るために、あえて敵のそばにいたのかもしれない」
あの時、女性は何を考えていたのだろう。
どうして壊理を自分たちに託したのか。
そして、なぜ最後まで姿を現さなかったのか。
考えれば考えるほど、分からないことばかりだった。
「……なるほどな」
轟が静かに呟いた。
「確かに、その状況で用心棒が逃げ切れたのは不自然だ。最初から別の目的があったなら、説明はつく」
「でも、敵のふりをしていたってことだろ?そんなの、映画みたいな話じゃねえか」
上鳴が戸惑い混じりに言う。
「現実でも、そういう任務はあるんじゃないかな」
緑谷はそう答えながらも、どこか釈然としない表情を浮かべていた。
その横顔を、おもちは階段の上から見つめていた。
鋭い。
やはり、緑谷出久という少年は侮れない。