第15章 死穢八齋會
22時を回った頃、寮の扉が勢いよく開いた。
「帰ってきた!!」
待ちわびていた峰田や上鳴、八百万たちが一斉に駆け寄る。扉の向こうに立っていたのは、緑谷、切島、麗日、蛙吹の四人だった。
「おめぇら、毎回すげぇことに巻き込まれて帰ってくるじゃん!おれ怖いよ!」
上鳴が大げさに肩をすくめる。その言葉に、張り詰めていた空気がわずかに緩んだ。
「本当に、皆さんご無事でよかったですわ……!」
八百万が安堵の息をつき、麗日と蛙吹も、心配をかけたことを詫びながらクラスメイトたちの輪に加わった。
そんな中、佐藤が出来上がったばかりのガトーショコラを切り分けると、緑谷の口元へぐいっと差し出した。
「ほら、食え!」
「えっ、あ、佐藤くん……!」
「疲れた時は、甘いもん食え」
有無を言わせぬ勢いで、緑谷の口にガトーショコラを詰め込む。
その強引さに、緑谷は目を白黒させながらも、口いっぱいのケーキをもぐもぐと咀嚼した。
佐藤なりの優しさなのだろう。
言葉を尽くして心配する代わりに、甘いものを食べさせる。そんな不器用な気遣いに、周囲から小さな笑い声が上がった。
おもちは、階段の手すりにもたれかかりながら、その光景を静かに眺めていた。
帰ってきた四人の顔を、一人ずつ確かめる。
麗日も蛙吹も、疲労の色こそ濃いものの、目立った外傷はなさそうだった。
一方、切島は見るからに満身創痍だった。病院で治療を受けてきたのだろうが、衣服の隙間から覗く肌には、あちこちに傷が残っている。
地下施設で見た、意識を失った彼の姿が脳裏をよぎった。
あの時、もしファットガムが現れなければ。
もし、自分があの場に居合わせなければ。
考えかけた思考を、彼女はそっと押し戻した。
今ここにいる自分は、雄英高校一年A組のクラスメイトだ。
そうでなければならない。
ふと、緑谷と目が合った。
「おかえりなさい」
彼女は、何事もなかったかのように微笑んだ。