第15章 死穢八齋會
一口飲むと、ほっとしたように目を細める。
「身体が温まりますし、シナモンには血行を促す作用なども期待できますものね。香りにもリラックス効果があると言われていますし……。このようなときにぴったりですわ。さすがですわ、おもちさん!」
「ふふ。お嬢様のお口にも合ったようでよかったわ」
彼女は心の中でそう付け加えた。
八百万は少し照れたように笑い、もう一口飲んだ。
「本当においしいですわ」
「俺もこれ好きかも。なんか落ち着くなぁ」
上鳴もカップを両手で持ち、深く息を吐いた。
まだ、緑谷たちの帰りを待つ時間は続いている。
テレビのニュースは変わらず事件を報じ、誰もが心のどこかで不安を抱えていた。
けれど、温かな飲み物を手にしたクラスメイトたちの表情は、先ほどよりも少しだけ穏やかになっていた。
おもちは空いたトレーをキッチンへ戻しながら、みんなの様子を眺めた。
笑顔がある。
会話がある。
誰かを心配し、誰かの帰りを待ち、互いに気遣い合う時間がある。
守りたいと思ったものは、きっとこういうものだった。
そう思う一方で、胸の奥にしまい込んだ秘密が、静かに重さを増していく。
青山の名前を隠したこと。
緑谷たちを欺いたこと。
そして、壊理に向けた気持ちが、いつしか任務だけでは説明できなくなっていたこと。
彼女はカップの縁に残った茶色い雫を見つめ、そっと目を伏せた。
今は、考えない。
せめて、この温かな香りが消えるまでは。
クラスメイトたちが少しでも安心していられるように。
彼女は再び微笑み、ソファの方へ歩いていった。