第15章 死穢八齋會
仮免試験以来、轟は以前よりも彼女のそばにいることが増えていた。
訓練の合間に声を掛けてきたり、食堂で隣に座ったり。何かと行動を共にする機会が多い。
本人に特別な自覚があるのかは分からない。
ただ、彼女と話すときの轟は、どこか自然体だった。
そして、その様子を快く思っていない人物が一人。
「おい」
不意に、二人の間へ割って入るように爆豪勝己がやってきた。
「俺にもやらせろ」
轟が顔を上げる。
「……なんでお前が来るんだよ」
「うるせぇ。てめぇだけ手伝ってんじゃねぇ」
「別に、お前も手伝えばいいだろ」
「言われなくてもそうするわ!」
火花が散りそうな二人を前に、おもちは困ったように笑った。
「ふふ。二人とも、ありがとう。それじゃあ爆豪君は、ミルクを温めてくれる?」
「ああ」
爆豪はすぐにミルクパンを受け取り、コンロに火をつけた。
最初は勢いよくつまみを回しかけたものの、彼女が横から「弱火でね」と声を掛けると、舌打ちしながらも火加減を調整する。
「……これでいいんだろ」
「ええ、ありがとう」
彼女はシナモンの入った小皿を受け取り、ほかのスパイスを準備した。
クローブ、カルダモン、そして少量のジンジャー。
香りを確かめながら、ミルクに加える順番を考えていると、爆豪がふと鍋の中を覗き込んだ。
「……チャイか?」
彼女は驚いたように顔を向けた。
「正解。よく分かったわね」
「匂いで分かるだろ」
「そうなの? 苦手だった?」
「いや。そういうわけじゃねぇけど」
爆豪はぶっきらぼうに答え、木べらでミルクをゆっくりとかき混ぜた。
「……なら、よかった」
彼女はスパイスを加えながら、楽しそうに微笑んだ。
甘いミルクの香りに、シナモンやカルダモンの異国情緒を感じさせる香りが重なっていく。
張り詰めていた心が、ほんの少しだけ緩む。
そのとき、爆豪が彼女の右腕に目を留めた。
「……おい、腕」
「え?」
「なんか動かし方、おかしくねぇか」