第15章 死穢八齋會
目を覚ましたとき、部屋の時計は二十時を少し回っていた。
「……いつの間にか寝ちゃったのね」
ぼんやりと呟き、おもちは上体を起こした。まだ身体には疲労が残っている。右腕を動かすと、赤黒く腫れた痣がズキリと痛んだ。
けれど、いつまでも休んでいるわけにはいかない。
クラスメイトたちは、今も緑谷たちの帰りを待っているはずだ。
彼女は手早く部屋着を身に着け、髪を整えると、ロビーへ向かった。
階段を下りるにつれて、テレビの音声とクラスメイトたちの声が聞こえてくる。
「まだ詳しいこと、分からないのかよ……」
「緑谷くんたち、大丈夫かな……」
ロビーでは、みんなが落ち着かない様子でテレビを見つめていた。ニュースは繰り返し死穢八齋會の襲撃事件を報じている。現場の映像が切り替わるたび、誰かが息を呑み、誰かが小さく呟いた。
彼女はその輪に加わる前に、ふと一人の少年へ視線を向けた。
青山優雅。
彼はソファに腰掛け、いつもと変わらない様子でテレビを眺めていた。
不安そうなクラスメイトたちの中にいても、特別に取り乱すことはない。時折、隣の生徒と言葉を交わしている。
――いつもどおりね。
彼女は何気ない顔で視線を戻した。
先ほど公安で目にした名簿が、脳裏をよぎる。
青山優雅。
あの名前が意味するものを、彼女はまだ誰にも話していない。
もちろん、本人に問いただすこともできなかった。確証がない以上、疑念を表に出すわけにはいかない。それに、今の彼女には、彼を守ろうとした自分の判断さえ正しかったのか分からなくなっていた。
「みんな、温かいものでも飲まない?」
努めて明るく声を掛けると、何人かが振り返った。
「おっ、いいね! なんか落ち着かないし、温かいもの飲みたい!」
上鳴がすぐに反応する。
「私、手伝うよ!」
芦戸が立ち上がりかけたところで、おもちは首を横に振った。
「大丈夫。みんなはここで待っていて。すぐに用意するから」
「えー、でもインターンで疲れてるでしょ。休んでなよ」
キッチンへ向かおうとする彼女に、耳郎が声を掛けた。
彼女は振り返り、柔らかく笑った。
「ありがとう。でも、何かしている方が気がまぎれるから」
その言葉に、耳郎は少しだけ表情を緩めた。