第15章 死穢八齋會
公安本部を後にしたおもちは、雄英高校へ向かう道すがら、制服に着替えていた。
死穢八齋會の地下研究所で身にまとっていた黒ずくめの衣服は、もう手元にない。血の痕跡も、任務の名残も、すべて処分した。
今の彼女は、ホワイトクレインのもとでヒーローインターンに励んでいた、雄英高校一年A組の生徒。
それ以外の何者でもなかった。
寮に到着した頃には、時刻は十八時を回っていた。
エントランスの扉を開けると、ロビーのテレビから聞き慣れたニュースキャスターの声が響いてきた。
『本日発生した死穢八齋會への襲撃事件について、現場では複数のヒーローが負傷し――』
ソファには、クラスメイトたちが集まっていた。
画面に映し出されているのは、崩壊した建物と、現場を行き交う救急隊員の姿。緑谷、切島、蛙吹、麗日たちの帰りを、みんなが今か今かと待っているところだった。
「……あ、おかえり!」
芦戸が最初に彼女の姿に気づいた。
「お疲れー! インターンどうだった?」
「ただいま。みんな、まだ起きていたのね」
いつものように微笑みながら、彼女はロビーへ足を踏み入れた。
その瞬間、テレビの画面に目を向ける。
そして、ほんのわずかに目を見開いた。
「……これ、死穢八齋會の事件?」
「そう! さっきからずっとニュースでやってるんだよ」
麗日たちが帰ってくるのを待っていた上鳴が、落ち着かない様子で答えた。
「緑谷と切島が現場にいたらしいんだ。蛙吹と麗日も一緒だったって……。連絡は来てるんだけど、やっぱり心配でさ」
「そう……」
彼女は画面を見つめた。
瓦礫の山。負傷者を運ぶ救急隊員。必死に現場を駆け回るヒーローたち。
その光景は、数時間前まで彼女自身がいた場所と重なっていた。
血の匂い。
銃声。
冷たい床に倒れた男たち。
そして、壊理の小さな手。
脳裏に浮かびかけた記憶を、彼女は静かに押し込めた。