第15章 死穢八齋會
彼の腕の中で、切島が苦しそうに息をしている。それでも、目の前で起きた出来事を理解することに意識を奪われていた。
味方を殺しただと?
いや、あの男たちは知崎の残党だ。彼女が彼らを撃つこと自体は、敵同士の抗争と考えれば説明がつく。
だが、問題はそこではない。
銃弾を銃弾で弾き返す技量。
一切の躊躇を見せず、相手を撃ち殺す冷徹さ。
そして、目の前で人が死んだというのに、彼女の表情はほとんど変わらなかった。
この女は、何者だ。
ヒーロー側の人間なのか?
それとも、もっと別の何かか。
ファットガムは、彼女から目を離せなかった。
彼女はそんな視線を意に介する様子もなく、拳銃を収めると、再び端末へ向き直った。
「……悪いけど、急いでいるの。まだ仕事が残っているから」
まるで、今の出来事など取るに足らないことだったかのように。
その言葉に、ファットガムははっとした。
仕事。
そうだ。彼女は一人で、何をしていた?
端末に表示されていた情報。素早く操作していた手。死穢八齋會の研究所に、ただ立ち寄っただけの人間とは思えない。
そのとき、脳裏に一つの記憶がよみがえった。
奇襲作戦を前に、公安から伝えられた言葉。
――今回の作戦には、優秀な陰の立役者が新たに加わっている。
詳しい素性は明かされなかった。
ただ、これまでとは違う形で捜査に協力し、作戦の成功を裏から支える人物だと説明された。
表には出ない。
功績を公にすることもない。
それでも、その存在が作戦の成否を左右する。
あのときは、具体的に誰なのかなど考えもしなかった。
ファットガムは、改めて目の前の女を見た。
知崎のすぐそばにいながら、壊理を抱いていたこと。
研究所に一人残り、何かの情報を抜き取っていたこと。
そして、一般のヒーローとは明らかに異なる、あの銃の扱い。
点と点が、少しずつつながっていく。
「……まさか、あんた……」
彼女が顔を上げた。
「何か?」
微笑みは変わらない。
だが、その瞳の奥には、相手の考えを見透かすような鋭さがあった。
ファットガムは、息をのんだ。