第15章 死穢八齋會
それどころか、まるで世間話でもするような口調だった。
ファットガムの警戒心が強まる。
「……あんた、何者や?」
彼女が答えようとした、その瞬間。
「ファットガム!!」
鋭い叫びが研究所に響いた。
次の刹那、出入口の陰から数人の男が飛び出してきた。
「死ねや、ヒーロー!!」
銃声が地下空間を切り裂いた。
ファットガムは切島を抱えている。すぐに身を翻すことはできない。
銃口がこちらを向いたのを認識した、その瞬間だった。
彼女の手が、腰元へ走った。
抜き放たれた拳銃。
乾いた銃声が、一発。
彼女が放った弾丸は、飛来する銃弾を正確に捉えた。
甲高い金属音が響き、弾丸同士が衝突する。ファットガムの目前で軌道を逸らした銃弾が、壁に火花を散らした。
「……は?」
ファットガムの口から、思わず間の抜けた声が漏れた。
銃弾を、銃弾で弾いた。
偶然などではない。
彼女は銃口をわずかに動かし、残党たちへ視線を向けていた。表情には、驚きも怒りも浮かんでいない。
ただ、冷静だった。
「なっ、なんだこいつ……!」
男たちが狼狽する。
その隙を、彼女は逃さなかった。
二発、三発。
銃声が立て続けに響く。
彼女の放った弾丸は、反撃しようとした男たちを次々と撃ち抜いた。男たちは銃を取り落とし、床へ崩れ落ちる。
容赦はなかった。
躊躇も、ためらいもない。
最後の一人が逃げようと踵を返したとき、彼女は静かに銃口を向けた。
そして、引き金を引いた。
男の身体が、床に倒れた。
静寂が戻る。
硝煙の匂いが漂う中、彼女は銃を構えたまま数秒間、周囲を確認した。新たな敵が現れないことを確かめてから、ようやく銃口を下ろす。
手慣れた動作だった。
あまりにも、手慣れていた。
「……」
ファットガムは、言葉を失っていた。