第15章 死穢八齋會
それは、突入作戦が始まる少し前のことだった。
おもちは、壊理が眠る前に、いつもより真剣な表情で彼女の目を見つめた。
「壊理ちゃん。おねえちゃんと、約束してほしいことがあるの」
「……やくそく?」
「うん」
彼女は壊理の小さな手を包み込んだ。
「これから、怖いことが起きるかもしれない。大きな音がしたり、知らない人たちがたくさん来たりするかもしれないの」
壊理の顔に、不安が浮かぶ。
それを見て、おもちは優しく微笑んだ。
「でもね。何があっても、私は最後までヒーロー側の人間だって知られちゃいけないの」
「……どうして?」
「おねえちゃんには、やらなきゃいけないことがあるから」
詳しい説明はできなかった。
公安の任務も、自分が何者なのかも、壊理にすべてを話すことはできない。
けれど、これだけは伝えておきたかった。
「もし、おねえちゃんが倒れちゃったらね」
彼女は、壊理の頭をそっと撫でた。
「真っ先に、緑色のお兄ちゃんが壊理ちゃんを迎えに来るから。その時は、迷わずお兄ちゃんのところへ行くんだよ」
「……おねえちゃんは?」
壊理は、心配そうに尋ねた。
「ステラおねえちゃんも、いっしょに来る?」
その問いに、おもちは一瞬だけ言葉を詰まらせた。
それでも、すぐにいつもの笑顔を浮かべた。
「ごめんね。お姉ちゃんはまだやらなきゃいけない事があるから一緒には行けない」
そして、壊理の額にそっと唇を寄せた。
「だから、約束ね?」
壊理は不安そうにしながらも、小さく頷いた。
その約束が、今、現実になろうとしていた。