第15章 死穢八齋會
「おねぇちゃんも、壊理ちゃんを助けに来たんだよ」
壊理の目に、みるみる涙が浮かんだ。
「……っ、う……」
小さな唇が震える。
何かを言おうとしても、声にならない。
おもちは急かさなかった。
ただ、壊理をそっと抱きしめた。
「もう、頑張らなくていいんだよ」
その言葉に、壊理の身体がぴくりと反応した。
「怖かったね。痛かったね……。もう、ひとりで我慢しなくていいんだからね」
優しく背中を撫でる。
その手つきは、どこまでも穏やかだった。
「これからは、助けてって言っていいんだよ。泣いたっていいし、怖いって言ったっていい。壊理ちゃんは、何も悪くないんだから」
「……わたし、わるいこじゃ、ないの……?」
震える声が、彼女の胸元から聞こえた。
おもちは目を閉じた。
この子は、ずっと自分を責めていたのだ。
自分の個性が悪いから。
自分がいるから、誰かが傷つくから。
だから、痛い思いをするのも仕方がないのだと。
そんなふうに思わせてしまうほど、追い詰められていた。
「違うよ」
彼女は、壊理を抱きしめる腕に少しだけ力を込めた。
「壊理ちゃんは、悪い子なんかじゃない」
そして、少女の耳元で、そっと囁く。
「生まれてきてくれて、ありがとう」
壊理の瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
次の瞬間、少女は彼女の胸に顔を押しつけ、声を上げて泣き始めた。
「うっ……うあぁ……っ!」
ずっと我慢してきた涙だった。
誰にも見せられなかった、助けてという叫びだった。
おもちは、何も言わずに壊理を抱きしめ続けた。
その小さな背中を、何度も、何度も撫でる。
泣いていい。
もう、隠さなくていい。
あなたを傷つけるために、ここにいる大人はいないのだと。
そのことが、いつか本当に伝わるように。
彼女は壊理を抱いたまま、優しく微笑んだ。
視線の先では、ヒーローたちが治崎と対峙している。
この子を苦しめてきた男を、今度こそ止めるために。
そして、壊理が初めて安心して泣ける場所を守るために。
おもちは、少女の頭にそっと頬を寄せた。
「大丈夫。もう、ひとりじゃないよ」
その言葉は、壊理の心にゆっくりと染み込んでいった。
長い間、固く閉ざされていた小さな心が、ようやく溶け始めていた。