第3章 USJ襲撃事件編
教室に笑いが起こった。
「そうそう!」
麗日も笑顔で近づいてくる。
「昨日助けてもらったし!」
「……私が?」
「うん!」
麗日は笑った。
「怖いとか、全然思わなかったよ」
その言葉に、彼女は少しだけ目を見開く。
「むしろ……」
麗日は拳を握った。
「私も負けてられへんって思った!」
その目は、体育祭の話を聞いたときと同じくらい真っ直ぐだった。
「私、絶対スカウトされたいんだ!」
「……そう」
彼女は思わず微笑んだ。
昨日までなら。
この笑顔を見せることすら、少し躊躇していたかもしれない。
「じゃあ、頑張らないとね」
「うん!」
麗日が笑う。
その隣で、芦戸が叫んだ。
「ねえねえ、体育祭で昨日の戦い方また見せてよ!」
「それは、ちょっと…」
「なんで!?」
「昨日は敵がいたから」
「そっか!」
妙に納得される。
彼女は思わず吹き出した。
その瞬間、昨日からずっと胸の奥にあった緊張が、ほんの少しだけほどけた。
怖がられていると思っていた。
距離を置かれると思っていた。
けれど――
誰も離れていかなかった。
むしろ、昨日初めて見た「本当の彼女」に、みんなが興味を持ってくれている。
「……変なの」
彼女が小さく呟く。
「何が?」
八百万が尋ねる。
「昨日、あんなものを見せたのに……」
彼女は周囲を見渡した。
「みんな、普通なんだね」
一瞬、教室が静かになる。
そして切島が笑った。
「当たり前だろ!」
「昨日一緒に戦った仲間じゃん!」
上鳴が続ける。
「ていうか、今さら距離置く方が変じゃね?」
「そうそう!」
芦戸が頷く。
「謎が増えただけ!」
「謎が増えた……」
彼女が苦笑する。
「うん!」
芦戸は楽しそうに笑った。
「だから、もっと知りたい!」
彼女は少しだけ目を細めた。
昨日まで、自分はこの場所にいるだけの存在だと思っていた。
任務のために作られた仮初めの学生生活。
けれど、今、目の前にいるクラスメイトたちは――
昨日、自分の背中を預けた仲間だった。
そして今も、何も変わらない顔で、自分の隣にいる。
「……ありがとう」
確かに彼女の口から出た言葉だった。
爆豪は少し離れた席から、その様子を見ていた。
何も言わない。ただ、彼女が昨日とは違う顔で笑っていることだけを、静かに見ていた。