第3章 USJ襲撃事件編
そう思っていた。
自分でも分かっている。
あの個性は、普通ではない。
戦闘中の自分も、普段の自分とはあまりにも違っていた。
だから。
(……距離を置かれるだろうな)
昨日までなら、隣の席から聞こえていた会話。
くだらない冗談、笑い声、今日は、少し遠く感じる。
彼女は無意識に姿勢を正した。
いつものように、誰にも踏み込ませないように。
「ねえ!」
突然、芦戸が彼女の机にやってきた。
「昨日の戦い、めっちゃすごかった!」
「……え?」
思わず顔を上げる。
「いや、マジで!」
上鳴もやってくる。
「何あの戦い方!? 壁とか床とか全部武器にしてたじゃん!」
「……」
彼女は言葉を失った。
「あとさ!」
切島が笑う。
「敵に向かって『もっと遊ぼうよ』って言ってたの、めちゃくちゃカッコよかった!」
「……聞いてたの?」
「そりゃ聞こえるだろ!」
「……」
彼女は少しだけ目を伏せた。
怖がられていると思っていた。
気味悪がられるかもしれないと思っていた。
なのに、
「さとうさんの個性のこと、もっと聞いていい?」
緑谷が少し遠慮がちに尋ねる。
「無理にとは言わないけど……すごく興味があるんだ」
「緑谷……」
「俺、昨日見てて思ったんだ」
緑谷は真剣な目をしていた。
「君は、戦うとき……すごく自由だった」
彼女は目を瞬く。
「自由……?」
「うん」
緑谷は頷いた。
「普段はすごく周りを見てるのに、戦ってるときは……考えてるようで、考えてないみたいな」
「……」
「直感で動いてるのに、その直感が全部正しいっていうか」
彼女は少し黙った。
「……そうかもしれない」
小さく笑う。
「私も、昨日初めて気づいたの」
「何に?」
「私、あんなふうに戦えるんだって」
その言葉に、轟が口を開いた。
「……バスの中では、あんなに無防備だったのにな」
「!」
彼女の顔が一気に赤くなる。
「……それは忘れて」
「無理だ」
「轟くん……」
「すまない」
全く悪びれていない。