第15章 死穢八齋會
地下施設の奥深くでは、すでに戦闘が始まっていた。
緑谷出久、相澤消太、サー・ナイト・アイをはじめ、切島鋭児郎、ファットガム、天喰環らが突入し、死穢八斎會の構成員たちと激しく交戦している。
狭い通路に響く爆音。壁を揺らす衝撃。入り乱れる足音と怒号。
その侵入者たちを迎え撃つように、トガヒミコとトゥワイスも動き始めていた。
誰もが、それぞれの持ち場で戦っている。
そんな混乱の中、治崎は足を止めることなく、地下通路を進んでいた。
その後ろを、おもちが壊理を抱いて歩いている。
壊理は彼女の胸元にしがみつき、顔を隠すように身を縮めていた。時折、遠くから響く爆発音にびくりと肩を震わせる。そのたびに、おもちは背中を撫で、安心させるように抱き直した。
大丈夫。
もうすぐ、終わるから。
心の中でそう繰り返しながら、彼女は周囲の状況を冷静に観察していた。
戦闘の音は、確実に近づいている。
ヒーローたちは、ここまで辿り着いたのだ。
その時だった。
何もないはずの空間が、突然揺らいだ。
「――っ!」
治崎の背後に控えていた構成員たちが、一斉に身構える。
次の瞬間、壁をすり抜けるようにして、一人の青年が姿を現した。
「……壊理ちゃん!」
通形ミリオだった。
その姿を目にした瞬間、おもちの胸が小さく跳ねた。
コスチュームは乱れ、身体のあちこちに傷を負っている。頬には血が滲み、呼吸も荒い。それでも、彼の瞳には一点の曇りもなかった。
壊理を助ける。
その目的だけを胸に、彼はここまで辿り着いたのだ。
おそらく、ここへ来るまでに治崎の手下たちと交戦したのだろう。傷だらけになりながらも、彼は一歩も引かなかった。
「……ミリオ君」
声には出さず、おもちは心の中でその名を呼んだ。
来てくれた。
公安の作戦が、ここまで進んでいる。
けれど、安堵を表に出すわけにはいかなかった。
今の自分は、治崎の隣に立つ女だ。