第15章 死穢八齋會
「壊理を連れてこい。俺の後ろを歩け」
「……承知しました」
おもちは壊理を抱き上げた。
少女の身体が、びくりと震える。
治崎の声を聞いただけで、壊理の指が彼女の服を握りしめた。顔を胸元に押しつけ、必死に身を縮めている。
その姿を見た瞬間、彼女の胸の奥で、冷たい何かが静かに燃え上がった。
この男は、今も壊理を自分の所有物だと思っている。
そして、これからもそうするつもりなのだ。
許せるはずがなかった。
それでも、彼女は表情を変えず、治崎の命令に従った。
壊理を抱えたまま、彼の後ろを歩く。
地下通路の奥から、再び大きな音が響いた。
ついに、ヒーローたちがこの施設へ踏み込んできたのだ。
おもちは、腕の中の少女をそっと抱き直した。
壊理には聞こえないように、小さく囁く。
「……もうすぐだよ」
長かった潜入も、終わりを迎えようとしている。
彼女が守り続けてきた小さな希望を、今度こそ本当の光の下へ連れ出すために。
おもちは、治崎の背中を見据えた。
公安の協力者としてではなく。
ただ一人の人間として、この男の手から壊理を取り戻すために。
――その時が、迫っていた。