第15章 死穢八齋會
小さな手が、服をぎゅっと握りしめる。
「……うん」
聞き取れるかどうかも分からないほど小さな声。
けれど、その声には確かな希望が宿っていた。
女性は壊理を抱きしめながら、静かに目を細めた。
――もう少しだけ、待っていてね。
心の中でそう告げる。
これまで彼女は、相手の懐に入り込み、嘘を重ね、必要な情報を手に入れることで任務を遂行してきた。
今回も、そのはずだった。
けれど今は違う。
壊理に向ける笑顔も、頭を撫でる手も、助けるという約束も。
そのすべてが、彼女自身の意思だった。
公安の命令だからではない。
ヒーローとしての体裁を守るためでもない。
この小さな子どもを、もう二度と泣かせたくないからだ。
おもちは、壊理の頭を優しく撫でた。
その瞳から、柔らかな笑みが消える。
代わりに浮かんだのは、獲物を見定めた狩人のような、静かな決意だった。
情報は揃いつつある。公安も動き始めた。
あとは、機を待つだけ。
敵の懐に入り込んだ彼女は、すでに必要なものを手に入れている。
壊理の信頼。
そして、治崎の油断。
誰も知らないところで、反撃の準備は整いつつあった。
――さあ、反撃開始だ。