第15章 死穢八齋會
「一つ、確認したいことがあります」
「何でしょうか」
「この情報の出所です」
室内の空気が、わずかに変わった。
「壊理という少女の個性の詳細に加え、薬物の生成方法、治崎の計画、さらには内部の人間しか知り得ない情報まで記載されている。これほど具体的な情報を、あなた方はどこから入手したのですか?」
ナイトアイの声は冷静だった。
彼は情報の重要性を理解している。だからこそ、その正確さに疑問を抱いていた。
外部からの調査だけで、ここまで深い情報を得ることは難しい。
治崎のすぐ近くにいる人間でなければ、知り得ない内容が含まれているのだ。
公安の担当者は、すぐには答えなかった。
数秒の沈黙のあと、口元に意味深な笑みを浮かべる。
「優秀な陰の立役者が入ってきたんだよ」
「……陰の立役者?」
「そう。こちらが想像していた以上に、うまく潜り込んでくれている」
それ以上、詳しい説明はなかった。
ナイトアイは相手の表情を注意深く観察したが、そこから読み取れる情報は限られていた。
公安が何らかの協力者を送り込んでいる。
しかも、その人物は死穢八斎會の中枢に近づき、極めて重要な情報を持ち帰っている。
そう考えるのが自然だった。
「……その協力者の安全は?」
問いかけたのは、ミリオだった。
彼は資料から顔を上げ、真剣な眼差しを公安の担当者に向けた。
「これだけ深い場所まで入り込んでいるなら、正体が露見した時の危険も相当なはずです」
「もちろん、こちらも把握している」
担当者は簡潔に答えた。
「だが、今はその人物の情報が不可欠だ。作戦を成功させるためにも、我々は慎重に動かなければならない」
ミリオは唇を引き結んだ。
誰かが危険を冒して情報を集めている。
そのおかげで、壊理を救い出す機会が生まれようとしているのだ。
ならば、自分たちがするべきことは一つだった。
「……絶対に、壊理ちゃんを助け出しましょう」
静かな声だったが、そこには強い決意が宿っていた。