第15章 死穢八齋會
数日後。
公安の会議室には、複数のプロヒーローたちが集められていた。
机上に広げられた資料には、死穢八斎會の組織構造、構成員の情報、武器の保有状況、そして治崎が進めている薬物製造計画の概要が記されている。
会議室を満たしていたのは、緊張感と重苦しい沈黙だった。
「……これは、看過できないな」
資料を読み進めていたサー・ナイトアイが、険しい表情で口を開いた。
彼の隣には、インターン中の緑谷出久と通形ミリオが座っている。二人とも、資料に目を落としたまま表情を硬くしていた。
とりわけ、緑谷の視線は、ある項目に釘付けになっていた。
――個性を利用した薬物の生成。
――対象者、壊理。
路地裏で出会った、あの小さな少女。
自分たちに助けを求めながら、治崎の姿を見ただけで怯えきっていた彼女が、今もあの男の手の中にいる。
「……壊理ちゃん」
緑谷の唇から、かすかな声が漏れた。
隣に座るミリオも、普段の明るさを失っていた。あの時、もっと強く踏み込んでいれば。あの場で彼女を連れて逃げていれば。そんな後悔が胸の奥を掠める。
だが、今は悔やんでいる場合ではなかった。
「今回の作戦では、死穢八斎會の解体を目指す」
公安の関係者が、会議室を見渡しながら告げた。
「対象施設への突入と構成員の確保を行う。同時に、薬物の製造に関わる設備を押さえ、壊理という少女を保護する。各事務所のヒーローには、それぞれの担当区域と役割を伝達する」
集められたヒーローたちは、次々と資料に目を通していく。
リュウキュウの事務所からは、蛙吹梅雨、麗日お茶子、波動ねじれ。
ファットガムの事務所からは、切島鋭児郎、天喰環。
そして、サー・ナイトアイの事務所からは、緑谷出久と通形ミリオ。
ほかにも複数のプロヒーローたちが参加していた。
それぞれの表情には、任務への覚悟が浮かんでいる。
特にミリオは、壊理の名前を見つめながら拳を握りしめていた。
今度こそ、必ず助け出す。
あの時、手を伸ばしてきた少女を、今度こそ恐怖から解放するのだ。
会議が進むなか、ナイトアイは資料のページをめくる手を止めた。
眉間に深い皺を寄せ、公安の担当者へ視線を向ける。