第3章 USJ襲撃事件編
相澤は自分の固定された腕を見る。
「脳無に捕まった時点で、俺はもう限界だった」
「……」
「腕も顔も、全部やられた。あいつが脳無を支配してくれたから、俺は生き残れた」
相澤は彼女を思い出す。
銃声一発、その瞬間から、脳無の動きが変わった。
そして、あの女は自分を助けたあとも、死柄木を相手に笑っていた。
「……変な奴だ」
相澤が呟く。
オールマイトが苦笑する。
「そうだね」
「普段は何を考えているのか分からない」
「うん」
「だが」
相澤の表情が少しだけ変わる。
「今日のあいつは、分かりやすかった」
「……?」
「楽しんでた」
オールマイトが笑う。
「私もそう思う」
二人の間に、短い沈黙が落ちる。
やがてオールマイトが静かに口を開いた。
「私は、彼女の叔父だ」
オールマイトはそれ以上、その関係について語らない。
「それでも……」
苦笑する。
「彼女が本当の個性を、私にさえ表面的にしか伝えていなかったことには驚いたよ」
相澤が目を細める。
「身内にも隠すのか」
「それだけ用心深い子なんだ」
「……なるほどな」
相澤は小さく息を吐く。
「公安が手放さないわけだ」
けれど、オールマイトは、どこか寂しそうに笑った。
「……ただ」
「?」
「今日の彼女を見て、少し安心した」
「安心?」
「ああ」
オールマイトは天井を見る。
「自分の力を、誰かに命令されたからではなく……自分の意思で使っていた」
その表情に、叔父としての安堵が滲む。
「楽しそうだった……あの子が、あんなふうに笑えるなら」
静かな声。
「まだ、大丈夫なのかもしれないな」
相澤は何も言わなかった。
ただ、今日、戦場を駆け抜けていた彼女の姿を思い出す。
自由に、楽しそうに、まるで、今まで自分を縛っていたものを全部振り払うように。
「……まあ」
相澤が目を閉じる。
「次からは、もう少し普通に生徒をやってもらいたいもんだ」
オールマイトが苦笑する。
「それは……本人に言ってくれ」
「そうする」
保健室に、小さな笑い声が落ちた。
けれど二人とも分かっていた。
今日、彼女はクラスメイトたちに、初めて本当の自分の一端を見せた。
そして、彼女自身もまた。
初めて、自分の力を「自由」に使ったのだ。