第3章 USJ襲撃事件編
「……楽しそうだったな」
オールマイトが呟く。
塚内が目を細める。
「楽しそう?」
「そう」
オールマイトは苦笑する。
「あんな彼女を見たのは……いつ以来だったかな」
「そんなに珍しいのか?」
「珍しいどころじゃない」
オールマイトは少し遠くを見るような目をした。
「彼女は普段、自分を徹底的に抑えている」
任務、観察、判断、最適解をいつも自分の感情より先に、それらを優先する。
「けれど、今日の彼女は違った」
オールマイトは思い出す。
自由に駆ける姿、笑う顔、敵を煽る声
「……まるで昔に戻ったようだった」
そして、オールマイトは小さく息を吐く。
「公安が、なぜ彼女を前線に立たせないのか」
「分かったのか?」
「ああ」
オールマイトは静かに頷いた。
「今日、ようやく分かったよ」
彼女の個性。
物体へ自身の力を纏わせる。
それを介して、対象を支配する。
そして、その支配が伝播する。
「強すぎる」
オールマイトの表情から笑みが消える。
「彼女が前線で本気になれば、戦場そのものを自分の手足にできてしまう」
塚内が黙る。
「敵だけならまだいい」
「……味方も巻き込む可能性がある」
「ああ」
だから、公安は彼女を前線に出さない。
観察役に徹させる。
指揮、分析、情報収集、必要最小限の介入。
「今日、彼女があれだけ自由に戦えたのは……」
オールマイトが呟く。
「周囲に味方が少なかったからだ」
そして、もう一つ。
「彼女自身が、自分で戦うことを選んだからだ」
そこへ、保健室の扉が再び開く。
「……話していたか」
相澤だった。
包帯だらけの身体。両腕は固定されている。
顔にも痛々しい処置の跡が残っている。
オールマイトが目を見開く。
「相澤くん……!」
「寝てろ」
「君こそ――」
「俺は平気だ」
そう言ったものの。
その声には疲労が滲んでいた。
相澤は二人を見てから、静かに椅子へ腰を下ろす。
「……あいつの話だろ」
「うん」
オールマイトが答える。
相澤は少し黙った。
「正直に言う」
「……?」
「俺は、あいつが個性を使っていなかったら……今ここにいないと思う」
二人とも息を呑む。