第13章 ヒーロー仮免試験
「すまねぇ。俺が落ちたばっかりに……」
ぽつりと落とされた言葉に、周囲の空気がわずかに変わる。
轟は物間を見ようともせず、視線を落としていた。
自分が不合格になったことで、クラス全体に余計な言葉を浴びせられている。
その事実を、彼なりに重く受け止めているのだろう。
「おやおや、轟くん! 君ほどの実力者でも不合格とはね
ぇ! いや、実に残念だ! もっとも、どれだけ強かろうと、試験に合格できなければ意味がないわけだけど!」
物間は轟を指さし、愉快そうに笑った。
「君たちA組は、派手な戦闘ばかりで、肝心なところが抜けているんじゃないのかい?」
「……」
轟は何も言い返さなかった。
ただ、その指摘を受け止めるように、唇を引き結んでいる。
その姿を見た瞬間。
彼女は、静かに一歩前へ出た。
そして、轟と物間の間に立ちはだかる。
「ねぇ」
柔らかな声だった。
けれど、その声音に、先ほどまでの穏やかさはなかった。
「轟君は悪くないよ」
物間の笑みが、わずかに止まる。
彼女はまっすぐに彼を見つめた。
「試験に落ちたことを本人が反省して、次に向けて努力しようとしている。それなのに、わざわざ人前で指をさして笑う必要がどこにあるの?」
「な、何だい? 僕は事実を言っているだけだが?」
「そう」
彼女は小さく頷いた。
「事実を伝えることと、他人を貶めることは違うわ」
その声は、決して大きくなかった。
怒鳴っているわけでもない。
表情だって、いつもと大きく変わったわけではなかった。
それなのに。
物間は、思わず口をつぐんだ。
彼女の青い瞳が、逃げ道を塞ぐように自分を捉えている。
「B組全員が合格したことは、素晴らしいと思うよ。みんな努力したんでしょう?」
「あぁ、当然さ!」
「与えられた功績に満足して、それで人より優位に立ったつもり?」
一拍。
彼女は首をわずかに傾けた。
「それで、物間君は何を証明できたの?」
廊下が、しんと静まり返った。
物間は口を開きかけたものの、すぐには言葉が出てこなかった。