第13章 ヒーロー仮免試験
「爆豪くんっ!!」
彼女は叫んだ。
「助けて!!」
「……あ?」
爆豪が振り返った、その瞬間。
彼女は迷わず、その背中へと逃げ込んだ。
「うわっ!?」
突然、背後に隠れられた爆豪が目を見開く。
隣を歩いていた切島と上鳴も、何事かと振り返った。
「えっ、何!? どうした!?」
「おいおい、おもち!? 何があったんだ!?」
彼女は爆豪の制服の裾をきゅっと掴んだ。
普段の彼女からは想像できないほど、弱々しい声が漏れる。
「……追いかけられるの、苦手なの」
「は?」
爆豪が眉を寄せた。
彼女の肩越しに視線を向けると、勢いよく駆け寄ってくる見知らぬ男が目に入った。
「おもちさあああん!!」
「……誰だ、あいつ」
「夜嵐くん……。試験で一緒だった人なんだけど……」
彼女は爆豪の背中に隠れたまま、ちらりと顔を覗かせた。
「ずっと、あんな感じで……」
「…………」
爆豪は、もう一度彼女を見た。
彼女は、普段ならどんな相手にも落ち着いて対応する。相手の言葉を受け止め、冷静に状況を判断し、余裕のある笑みさえ浮かべてみせる女だ。
それなのに、今はどうだ。
制服の裾を掴む指先に力がこもり、こちらの背中に身を寄せている。目元には涙まで浮かんでいた。
――こいつ、こんな顔もするのか。
驚きと同時に、胸の奥に妙な感覚が湧き上がった。
自分でもよく分からないまま、爆豪は彼女を背中に庇うように一歩前へ出た。
「おい、テメェ」
「っ!」
夜嵐が勢いよく立ち止まる。
「何、人の後ろに隠れてんだ?」
「爆豪くん、お願い……」
背後から、か細い声が聞こえた。
その一言で、爆豪の眉間に深い皺が刻まれる。
「……ああ?」
彼は夜嵐を睨みつけた。
「嫌がってんだろうが。聞こえねえのか、テメェの耳は飾りか!?」
「えっ!? いや、俺はただ、彼女に気持ちを――!」
「気持ちがあんなら、相手の嫌がることをすんじゃねえ!!」
怒号が響き渡った。
「追いかけ回して、テメェの気持ちばっか押しつけてんじゃねえぞ!!」
「うっ……!」
夜嵐が思わず後ずさる。