第13章 ヒーロー仮免試験
彼女の手を握る夜嵐の瞳は、まるで太陽でも映しているかのように輝いていた。試験中の悔しさなど、すっかり吹き飛んでしまったらしい。
「俺は、あなたのことがもっと知りたい! ぜひ、またお話しさせてください!」
「あ、あの……」
彼女はそっと手を引こうとした。
しかし、夜嵐は離さない。
むしろ、逃がすまいとするように、ぎゅっと手を握り直した。
「俺、本当にあなたのことが――!」
「あ、圧が……熱がすごい……」
思わず本音が漏れた。
公安で培った観察眼が、目の前の青年の情熱を分析しようとする。
熱意。純粋さ。行動力。相手の反応を気にせず突き進む突破力。
……いや、最後の項目は少し問題があるのではないだろうか。
「夜嵐くん、ちょっと離れてくれる? 近い……」
彼女は身じろぎしながら、困ったように微笑んだ。
「っ! すみません!!」
夜嵐は一瞬、ぱっと手を緩めた。
これでようやく解放される。
そう思ったのも束の間。
「ですが! この気持ちだけは、どうしてもお伝えしたかったんです!!」
「そ、そう……」
「俺、諦めませんから!!」
「……え?」
「また会いましょう!!」
「いや、あの、私、そういう意味で言ったわけじゃ……!」
彼女は慌てて後ずさった。
そして、夜嵐が再び一歩踏み出した瞬間。
「ご、ごめんなさいっ!」
彼女は逃げた。
「おもちさあああん!! 待ってください!!」
「ま、待てませんっ!」
「なぜですかあああ!!」
「なぜって……!」
なぜも何も、距離感が近すぎるのだ。
彼女は必死に歩調を速めた。背後から迫る夜嵐の声は、少しも遠ざかる気配がない。
むしろ、近づいている。
「好きです!! 本当に好きです!!」
ついに、彼女の目元に涙が滲んだ。
どうしよう。
誰か。
誰でもいいから、助けてほしい。
そのとき、視界の端に金色の髪が映った。
見慣れた、逆立った金髪。
その隣には、切島と上鳴の姿もある。
彼らは何やら話しながら、帰りのバスへ向かって歩いていた。
彼女の頭に、ある記憶が蘇る。
一次試験を通過したとき。
轟の熱烈な好意に戸惑い、彼の背中に隠れて難を逃れた、あのときのこと。
――あのときは、轟くんだったけれど。
今度は。