第3章 USJ襲撃事件編
「家族の話も、あんまり聞いたことないよね」
麗日が言う。
「好きなものとか、休日何してるとかも……」
「そういえば知らねぇな」
切島が首を傾げる。
「それになんか……妙に落ち着いてない?」
芦戸が勢いよく手を挙げる。
「うちらと同い年とは思えないくらい大人っぽい!」
「寝顔は幼かったけどな。」
轟が何気なく言った。
「……寝顔?」
一斉に視線が集まる。
「バスで寝てただろ」
その言葉に、全員が黙る。さっきまで敵を圧倒していた彼女がバスの中では、何も警戒せずに眠っていた。その事実が、余計に彼女を謎めいた存在にしていた。
「……余計に分からなくなった」
耳郎が呟く。
「普段の彼女と、戦ってる彼女。どっちが本当なんだろ」
「どっちも本当なんじゃない?」
緑谷が答えた。
「……たぶん」
少し離れた場所では、彼女がまだ負傷したクラスメイトの手当てをしていた。
「はい。これで大丈夫」
「ありがとう」
「無理して歩かないでね」
穏やかな笑顔。
いつもの彼女だった。
しかし誰もがもう、知ってしまった。
あの笑顔の奥に。
敵を前にして笑う、もう一つの顔があることを。
「……知りたい」
八百万が静かに言った。
「彼女が、いったい何者なのか」
その言葉に、誰も反対しなかった。
緑谷が頷く。
「どうしてあんなに戦えるのか。どうして、あんなに強い個性を隠していたのか」
轟が彼女を見る。
「本人が話したくなるまで、聞くつもりはない」
「でも!」
芦戸が身を乗り出す。
「いつか絶対聞いてみたい!」
「だな!」
切島が笑う。
「謎めいた美女の正体って、気になるだろ!」
「お前は美女なら何でもいいだろ」
耳郎が呆れたように突っ込む。
「そんなことねぇって!」
そんな会話が交わされる中、爆豪だけは、何も言わなかった。少し離れたところで、彼女を見ている。彼女は気づいていない。いや気づいていても、何も言わないだけなのかもしれない。
爆豪は、ふと思った。
(……こいつ、マジで何者なんだ)
ただの生徒じゃない。それだけは、もう分かる。その答えを、今すぐ知りたいとは思わなかった。今まで見ていた彼女と今日初めて見た彼女。その二つが、どう繋がっているのか。
爆豪は黙ったまま、彼女の横顔を見つめていた。