第13章 ヒーロー仮免試験
合格発表の時間が訪れた。
会場の大型モニターに、仮免許試験の合格者一覧が映し出される。名前を探す生徒たちの間から、歓声や安堵のため息が次々と上がった。
「やったああ! 受かったぁ!」
芦戸が飛び跳ね、耳郎や八百万と抱き合う。切島は拳を突き上げ、上鳴と緑谷も互いの合格を確かめ合っていた。
「緑谷くん、合格おめでとう!」
「うん! 麗日さんも、おめでとう!」
それぞれが苦労を乗り越え、ようやく掴んだ結果だった。
彼女もまた、モニターへと視線を向けた。
並んだ名前の中に、自分の名前を見つける。
――合格。
文字を見つめ、彼女は小さく息を吐いた。
本免許の合格者として扱われていることを知るのは、本人と相澤だけだ。ほかの生徒たちにとって、彼女もまた、苦難の末に仮免許を手にした仲間の一人にすぎない。
「おもちさん、合格だよ!」
緑谷が嬉しそうに振り返った。
「おめでとう!」
「ありがとう、緑谷くん」
彼女は微笑んで応じた。
けれど、その笑顔はどこかぎこちなかった。
周囲では、合格を喜ぶ声が響いている。互いの健闘を称え、試験中の出来事を振り返り、これからのヒーロー活動に胸を躍らせる生徒たち。
彼女はその輪から一歩離れ、彼らの様子を静かに眺めていた。
自分も、かつてはこの瞬間を夢見ていた。
ヒーローとして認められること。
自分の力を正々堂々と使い、人々を守ること。
誰かの命令に従うのではなく、自分の意志で救いたい人を救うこと。
それが、彼女の望んでいた未来だったはずだ。
それなのに。
――本免許、合格。
その事実を喜ぶより先に、頭に浮かぶのは、これから課せられる任務のことだった。
公安委員会の会長からの指示。
プロヒーローとしての活動。
そして、レディ・ナガンが請け負っていた、表には決して出ないダークサイドの仕事。
ヒーローの免許を手に入れた瞬間に、その資格を利用して、再び闇の中へ引き戻されようとしている。
なんとも皮肉な話だった。
「……はあ」
思わず、小さなため息が漏れる。
いっそのこと、何も考えずに済めばいいのに。
これからどうするのか。公安にどう対抗するのか。自分の個性の中に眠る龍のことも、まだ分からないままだ。
考えなければならないことが多すぎる。