第13章 ヒーロー仮免試験
合格者の発表に向けて、会場では着々と準備が進められていた。
試験を終えた生徒たちの間には、安堵と緊張が入り混じった空気が漂っている。負傷者の手当ても一段落し、試験官たちは採点と評価の最終確認に追われていた。
そんな中、彼女は相澤と共に、別室へ呼び出されていた。
控室にいたのは、試験運営を担当する目良だった。
いつもなら眠たげな目をしている彼も、今はどこか思い詰めたような表情を浮かべている。机の上には数枚の書類が置かれていた。目良は二人が席に着くのを待ってから、ゆっくりと口を開いた。
「……試験、お疲れさまでした」
その声音は、労いの言葉とは裏腹に重かった。
「おもち。今回の試験で、君は晴れてヒーロー本免許に合格した」
「……は?」
相澤が眉をひそめる。
目良は彼の反応を予想していたのか、表情を変えずに続けた。
「これがどういう意味を持つのか、もう分かっているよね」
その言葉を聞いた途端、彼女は静かにうつむいた。
やはり。
仮免試験を受けると決まったときから、胸の奥に引っかかっていた嫌な予感。それが、最悪の形で現実になろうとしていた。
「待て。今回は仮免試験だろう。本免合格とはどういうことだ」
相澤の声が鋭くなる。
彼は彼女と目良を交互に見た。説明を求める視線を向けられ、目良は小さく息を吐いた。
「通常の受験者とは、事情が違うんです」
「事情?」
「……彼女には、公安での五年以上にわたる実務経験があります。そして今回の仮免試験にも合格した。それによって、本免許の合格基準を満たしたという扱いになったわけです」
彼女は顔を上げずに答えた。
「つまり、公安としての実務経験と、今回の仮免試験の合格。その二つをもって、私は本免許の合格基準を満たしたということですか」
自分の口から出た言葉は、驚くほど冷静だった。
けれど、膝の上で握り締めた手には、力がこもっていた。
公安に所属していた頃から、彼女は自分の経歴が普通ではないことを理解していた。