第13章 ヒーロー仮免試験
緑谷の頭の中で、次々と疑問が浮かび上がっていく。
彼女は、何者なのだろう。
今まで見せてきた力が、彼女の個性のすべてではなかったのか。
それとも、まだ彼女自身も知らない何かがあるのだろうか。
緑谷は、彼女の顔をまっすぐに見つめた。
「おもちさん、あなたは、一体……」
その言葉の先は、続かなかった。
彼女は答えられなかったのではない。
答えを、隠し通せなくなったのだ。
これまで、個性のことも、過去のことも、すべて慎重に隠してきた。周囲に疑われないよう、必要以上の力を見せず、自分の正体に繋がるものをひとつずつ覆い隠してきた。
けれど、今の光は違う。
自分の意思で発動させたものではない以上、事前に制御することも、隠すこともできなかった。
しかも、その力は緑谷の身体にまで及んでいる。
彼は、すべてを目撃した。
もう、曖昧な説明で誤魔化すことはできない。
彼女はゆっくりと顔を上げた。
先ほどまで浮かべていた不敵な笑みは、もうない。
代わりに、その美しい瞳には、今まで誰にも見せてこなかった戸惑いが滲んでいた。
「……緑谷くん」
名前を呼ぶ声は、いつもと変わらず穏やかだった。
けれど、その先の言葉を選ぶまでには、少しだけ時間が必要だった。
彼女自身、まだ理解できていないのだ。
自分の内側に眠るものが、いったい何なのか。
そして、あの龍がなぜ今、自分を助けたのか。
ひとつだけ、確かなことがあった。
彼女の個性は、彼女自身が理解していた領域を、すでに超え始めていた。