第13章 ヒーロー仮免試験
先ほど使ったのは、限界を超えた身体を無理やり動かすための、神経活動への干渉だけだった。あのような治癒の力は、これまで一度も意図して使ったことがない。
そもそも、自分の個性に、こんな能力があっただろうか。
彼女はゆっくりと、自分の胸元に手を当てた。
その奥に、何かがいる。
ずっとそこにいたはずなのに、今まで自分が知らなかった存在。
夢の中で出会った、あの黄金の龍。
「……私の意思とは関係なく、龍が私を助けたの?」
呟きは、誰に向けたものでもなかった。
けれど、胸の奥に残る温かな感覚が、その問いに答えているような気がした。
自分が倒れることを、龍は許さなかった。
それだけではない。
彼女の身体を治癒し、触れていた緑谷にまで、その力を分け与えたのだ。
個性を使ったという実感さえない。
ただ、龍がそうすると決めた。
それだけで、これほどのことが起きた。
彼女は目を見開いたまま、しばらく動けなかった。
「……おもちさん」
すぐそばから、緑谷の声が聞こえた。
彼は自分の腕を見つめたあと、ゆっくりと彼女へ視線を戻した。
その瞳には、驚きと困惑、そして抑えきれない疑問が浮かんでいた。
「僕の怪我も、治ってる……。さっきまで、確かに痛みがあったのに」
彼は彼女を支えていた腕を見下ろした。
自分の身体が治ったことも不思議だったが、それ以上に気になることがあった。
光は、彼女の身体から生まれた。
そして、自分が彼女に触れていた部分から、光が伝わってきた。
つまり、自分は彼女の個性によって治癒されたのだろう。
しかし、これまで彼女が見せてきた個性と、今起きた現象はあまりにも違いすぎる。