第13章 ヒーロー仮免試験
地面に伏した轟と夜嵐は、なおも意識を失ってはいなかった。
身体は超音波攻撃の影響で思うように動かず、立ち上がることさえままならない。それでも、二人は諦めていなかった。
「……まだ、終わってねえ」
轟が歯を食いしばり、地面に伏せたまま炎を放つ。激しく燃え上がる炎が周囲の空気を熱し、水分を奪っていく。
その炎に呼応するように、夜嵐もまた、わずかに残った力を振り絞った。
「うおおおっ……!」
風が吹き抜ける。
轟の炎によって熱せられた空気を、夜嵐の風が周囲へと送り出していく。熱と風が生み出す乾燥した環境。それは、ギャングオルカの弱点を突くための一手だった。
二人とも、満足に身体を動かせる状態ではない。
それでも、できることはある。
倒れたままでも、戦える。
自分たちが今できる精一杯を、二人は諦めずにぶつけていた。
その姿を、彼女は霞む視界の中で見つめていた。
――まだ、みんな戦っている。
痛みで息をするのも苦しい。身体を起こそうとするだけで、傷口が悲鳴を上げる。超音波の余韻は頭の奥にこびりつき、平衡感覚も戻らない。
それでも、轟と夜嵐は諦めていなかった。
ならば、自分も。
彼女はゆっくりと目を伏せた。
「……少しだけ、付き合ってもらうわよ」
自分自身へ、個性を発動させる。
対象を支配する力を、自分の身体に向ける。それは本来の使い方とは異なる、極めて限定的な応用だった。
脳内の神経活動に干渉し、一時的にドーパミンの放出を促す。
痛みが消えるわけではない。傷が癒えるわけでもない。身体そのものが回復するわけではなく、疲労がなくなるわけでもなかった。
ただ、脳が生み出す一時的な高揚感によって、限界に近い身体を無理やり動かすための、気休めに近い手段。
使い方を誤れば、身体が発する危険信号を無視してしまう。
それでも、今は構わなかった。
彼女の指先が、地面を掴む。
震える腕に力を込め、ゆっくりと上半身を起こした。
「……っ、はぁ……!」
喉の奥から、苦しげな息が漏れる。