第13章 ヒーロー仮免試験
救護班と負傷した一般市民を狙い、ヴィランの手下たちが猛然と迫っていた。
「くっ……!」
緑谷に抱えられた真堂は、荒い呼吸を繰り返しながらも、必死に個性を発動させていた。地面を揺らし、足場を崩すことで、救護班へ向かおうとするヴィランたちの進路を塞いでいる。
その顔には深いクマが刻まれ、額からは冷や汗が絶え間なく流れていた。すでに限界が近いことは、誰の目にも明らかだった。
それでも、彼は個性を使うことをやめなかった。
「真堂くん、無理しないで! もう十分だから!」
緑谷が心配そうに声をかける。しかし、真堂は苦しげに眉を寄せながらも、首を横に振った。
「……まだだ。あいつらを通すわけには、いかねえ……!」
負傷した一般市民を守るために。
救護班が救助活動を続けられるように。
彼だけではない。試験に参加している生徒たちは、それぞれの場所でヴィランの猛追を食い止めていた。疲労に顔を歪めながらも、仲間と連携し、負傷者を守り、必死に戦い続けている。
その光景を、ギャングオルカは冷静に見渡していた。
一人ひとりの動き、連携の精度、そして追い詰められた状況で何を優先するのか。
彼は試験官として、生徒たちの行動を見極めていた。
――その一瞬だった。
「よそ見するなんて、余裕そうね」
低く澄んだ声が、彼の背後から響いた。
彼女は痛む身体を押して踏み込み、ギャングオルカの側頭部めがけて蹴りを放った。
不意を突いた一撃。
しかし、ギャングオルカは大きく体勢を崩すことなく、彼女へと向き直った。
「……まだ動けたか」
その声音には、わずかな感心と警戒が混じっていた。
彼女は答えない。
身体中に走る痛みを押し殺し、鋭い眼差しで彼を見据える。先ほど子どもを庇った際に負った傷は、決して軽いものではなかった。それでも、目の前の敵から意識を逸らすことだけはしなかった。
次の瞬間。
ギャングオルカが口を開いた。
「ならば、これならどうだ」
空気が震えた。