第3章 USJ襲撃事件編
あまりにも自然だった。
まるで、さっきまでの戦闘など存在しなかったかのように。
轟は思う。
あのバスの中で、自分の肩に頭を預けて眠っていた彼女も。
敵を前にして、楽しそうに笑っていた彼女も。
どちらも、同じ彼女なのだ。
その事実が、妙に印象に残った。
そしてもう一人。
爆豪は、少し離れた場所から彼女を見ていた。
何も言わない。ただ、静かに、彼女が負傷者の手当てをする姿を見つめている。
先ほどの戦闘が、頭から離れなかった。
笑っていた。
敵を前にして、楽しそうに。
まるで、今まで抑えていたものを全部解放するように。
「もっと遊ぼうよ」
あの声が、まだ耳に残っている。
そして今は――
「痛かったら言ってね」
柔らかい声で、クラスメイトの傷を手当てしている。
爆豪は眉を寄せた。
(……何なんだ、こいつ)
戦闘中の恐ろしさと、今の穏やかさ。
その差が、妙に引っかかる。
けれど、同時に爆豪は見ていた。
彼女が一度も、自分の強さを誇るような顔をしていないことを。誰かに褒められようともせず、「私が助けた」などと言うこともなく。
ただ、目の前で傷ついている人間を手当てしている。
「……次」
彼女が別の生徒へ声をかける。
爆豪は、ほんの少しだけ目を細めた。
戦うときの彼女も、こうして誰かを助けている彼女も、どちらも嘘じゃない。
ただ――
「……何者だ?」
爆豪はひとり呟く。
今はまだ、ただ静かに、彼女を見ていた。