第13章 ヒーロー仮免試験
ギャングオルカの猛攻は、途切れることがなかった。
おもちは息を整える暇もなく、次々と繰り出される攻撃をかわし、絶対支配で相手の動きを封じようと試みていた。しかし、相手はヒーローチャートナンバー10に君臨するプロヒーロー。わずかに動きを鈍らせることはできても、決定的な隙を作るには至らない。
腕が痺れていた。呼吸も乱れている。
それでも、彼女は一歩も退かなかった。
その時だった。
「お姉ちゃん……! 助けて!!」
か細い声が、瓦礫の向こうから聞こえた。
おもちの瞳が、そちらへと向く。
逃げ遅れた子どもが、崩れた壁の陰でうずくまっていた。目の前で繰り広げられる戦闘に怯え、涙を浮かべながら、必死に助けを求めている。
「……っ!」
ほんの一瞬だった。
けれど、ギャングオルカはその一瞬を見逃さなかった。
「甘い!」
巨体が踏み込む。
鋭い斬撃が、一直線に彼女へと襲いかかった。
いや、正確には――彼女の背後にいる子どもへと。
考える時間などなかった。
「危ないっ!」
おもちは子どもに向かって駆け出すと、その小さな身体を自分の胸元へと抱き寄せた。
そして、自らの背中を差し出すようにして、子どもを庇う。
次の瞬間。
鋭い衝撃が、彼女の身体を襲った。
「――っ、ぁ……!」
声にならない息が漏れる。
身体に走る激痛。衝撃に耐えきれず、膝が崩れそうになる。それでも彼女は、腕の中の子どもを決して離さなかった。
やがて攻撃が収まる。
おもちは荒い呼吸を繰り返しながら、ゆっくりと子どもの顔を覗き込んだ。
「……大丈夫?」
その声は、驚くほど優しかった。
「どこも痛くない? 怪我はしてない?」
子どもは目を見開いたまま、何度も頷いた。
「う、うん……! お姉ちゃんは……?」
「よかった……」
彼女は、ほっとしたように微笑んだ。
その背中には、痛々しい傷が刻まれていた。コスチュームは裂け、傷口から血が滲んでいる。立っていることすら困難なはずだった。
それでも、子どもは無事だった。
彼女が守りたかったものは、ちゃんと守られていた。