第13章 ヒーロー仮免試験
「――っ!」
緑谷が真堂の救助に向かった瞬間、おもちは一人でギャングオルカと対峙することになった。
彼女は歯を食いしばり、迫り来る攻撃をぎりぎりでかわした。
「おいおい、仲間を助けに行ったか!」
ギャングオルカの巨体が、彼女へと迫る。
「だったら、今度はお前一人で相手をしてみろ!」
重い拳が振り下ろされる。
おもちは身を捻って回避したものの、拳が地面を砕き、衝撃が足元を揺らした。
「……っ!」
体勢を立て直す間もなく、次の攻撃が襲いかかる。
彼女は絶対支配を発動させ、相手の動きに干渉しようとした。
しかし、ギャングオルカは力任せにその制御を振り切るように動き、彼女へと距離を詰めてくる。
完全には止められない。
ならば、攻撃を受け流し、隙を見つけるしかない。
彼女は冷静に相手の動きを見極めながら、後退する。
だが、相手はヒーローチャートナンバー10に名を連ねる実力者だ。
攻撃の一つひとつが重く、間合いの詰め方にも無駄がない。
たった一人で対処するには、あまりにも厳しい相手だった。
「……っ、まだ……!」
歯を食いしばる。
緑谷が真堂を助けた判断は間違っていない。
目の前で危険にさらされていた人間を救う。それこそが、ヒーローとして当然の行動だ。
だからこそ、彼女はその選択を責めるつもりなどなかった。
ただ――。
今は、自分が耐えるしかない。
ギャングオルカの攻撃を受け止めきれず、彼女の身体が大きく後方へと弾かれた。
「ぐっ……!」
地面を滑り、何とか踏みとどまる。
息が乱れる。
腕に痺れが走る。
それでも、彼女は立ち上がった。
背後には、まだ救助を必要としている人々がいる。
ここで自分が崩れれば、ギャングオルカを止める者がいなくなる。
彼女はゆっくりと顔を上げた。
その瞳には、恐怖も疲労も確かにあった。
それでも、退くつもりはなかった。
「……あなたを、ここから先へは行かせない」
静かな声だった。
ギャングオルカが、わずかに口元を歪める。
「いい目だ。だが、一人でどこまで持ちこたえられるかな?」
次の瞬間、巨体が再び動いた。
おもちは、迫り来る猛攻を前にしても、決して視線を逸らさなかった。